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ゼロの使い魔 AOS[改訂版]第1話 まほうのくに

ゼロの使い魔 二次創作

2026-04-20 23:45:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:18   閲覧ユーザー数:18

 

第1話 まほうのくに

 

 

少女は憂鬱だった。

 

 

彼女は貴族。一国を代表する大貴族の娘である。

 

 

ここは王立トリステイン魔法学院。トリステイン王国の名だたる貴族の子女が集まる学び舎。

 

 

彼女は魔法学院の新入生。自室の窓から夜空を見上げてため息。これは入学して1月ほどたったその日の出来事。

 

「・・・今日の実技もうまくいかなかったな」

 

 

「魔法」学院においての実技とはすなわち「魔法」である。その名の示す通りこの学院は魔法使い(メイジ)を育成する教育機関に他ならない。

 

 

「ちゃんと呪文も唱えてるし、杖も振るっているはずなのに・・・なのに」

 

 

この国では魔法を使える者を貴族と呼び、それ以外のモノは平民と呼ばれる。

 

 

「私は貴族なんだから魔法が使えるはず……貴族なんだから」

 

 

貴族と平民。二者の間には社会的にも能力的にも大きな隔たりが存在している。

 

 

「貴族なんだから……貴族なんだから……」

 

 

そう、魔法使えるものが貴族!!この国において絶対の権益者である!!

 

 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは憂鬱だった。

 

ルイズが思い出すのは教室の朝礼での一幕。

 

 

 

 

「おはようございます、みなさんがこの学院に入学して1月が経ちました」

 

 

紫色のローブに身を包み帽子をかぶった少しふくよかな中年女性が教壇に立つ。クラスの担任教師だ。挨拶から話を切り出しこれまでの総括や批評、今日の予定の説明を続ける。

 

 

「今年は基礎が出来ている方が多くて授業も非常に進めやすいです、今後も油断せずに...」

 

 

「先生!!基礎が出来ていない進めづらい方がいると思いますが、失礼ですが認識が間違っているかと」

 

 

教師の話に1人の生徒が割って入った、そして席を立ちルイズのほうを指差し話をさらに続ける。

 

 

「基礎どころか魔法も使えない平民のような生徒がいるようですよ。この学院には貴族の子供しか入学できないはずですが」

 

 

「……先生の話を遮ってはいけませんよ、席に座ってください」

 

 

教室内が少しづつ騒がしくなり、ルイズのほうに教室中の視線が集まる。

 

 

「大量の資金援助があれば平民でも入学できるという噂話を聞いた事がありますよ」

 

 

「よ!流石ヴァリエールのお嬢様!名家生まれは羨ましいなー」

 

 

調子に乗った男子が合いの手を入る中、教室がクスクスとした失笑に包まれた。

 

 

「ミセス・シュワールズ!かぜっぴきのマリコルヌが私を侮辱し……」

 

 

ルイズが負けじと勢い良く反論しようと立ち上がる……シュワールズ先生が手に持った小ぶり杖を振った。ルイズと他2名の男子が糸が切れた人形のように席に着いた。

 

「それ以上の私語は大きな減点対象になります、よろしいのですか?」

 

 

教師の静かな一喝に教室は静まり、失笑していた生徒もいそいそと大人しく席に座った。

 

 

「学院生活に慣れて気が緩んでいる方がたくさんいるようですね、非常に残念です」

 

 

皆を諭し静まり返った教室でシュワルーズは厳しい顔で教室を見渡し言葉を続ける。

 

 

「確かに遅れている生徒も居るようですがまだ1ヶ月目です、来年の進級試験まで時間はあります。使い魔召喚試験までに各自、自分のペースで間に合うように油断無く努力するように」

 

 

そう言って朝の挨拶は終わり1日の授業が始まったのであった。

 

 

 

 

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。通称「ルイズ」

トリステイン王国でも三本指に入る大貴族ラ・ヴァリエール家の三女であり、代々優秀な魔法使いを輩出し両親と上の姉達も名の知れた魔法使いである。

 

 

才能豊かな家族とエリートと呼んで申し分ない家柄。当然、自分もラ・ヴァリエール家の名に恥じない魔法使いになると思って生きてきた。

 

ルイズは魔法が使えなかった。

 

両親や上の姉妹達はもちろん、高名な家庭教師にも教わったが現在まで成功した魔法はゼロ。あえて補足するのならば呪文の種類と関係のない爆発を起こす。

 

そんな彼女がトリステイン王国において魔法育成機関の最高峰であるこの学院に入学したのがちょうど1ヶ月前である。

 

授業を終えルイズは自分の寮室に戻り、窓から夜空を見上げる。

 

今日の実技の授業ではクラスでただ1人なにも出来なかった、クラスメイトや教師からは失笑されたがルイズはもう慣れた。

 

慣れてはいるが、いつまでもバカにされている現状はとても悲しい。

 

15歳の少女が現在の環境で傷つかないわけがないのだから。

 

「貴族なんだから……貴族なんだから……」

 

それでも貴族のプライドとラ・ヴァリエール家のプライドを持って心を保っている。

 

「来年は進級できるかな、進級試験で使い魔を呼び出せるのかしら」

 

「誰もが認めてくれるような凄い使い魔を召喚したいな・・・」

 

今朝の教師の話で出てきた進級試験、使い魔召還のことを思い出してルイズはまだ見ぬ使い魔に思いを馳せる。

 

進級試験、1年から2年に上がる時に自分の生涯のパートナーとなる使い魔を呼び出す儀式。自らの手となり目となり耳となり時には命を賭けてマスターを守る、魔法使いが使役する異形のものである。

 

一般的な動物やモンスター、伝説に近い存在であるドラゴンまで召喚可能で使い魔を見ればマスターの力量がわかるとも言われている。

 

「みんなからバカにされているけど、使い魔を召喚できればもう平民やゼロなんて言われないはず」

 

 

「ちゃんと私の所に来なさいよ!ドラゴンじゃなくても良い、犬でもかまわないわ!!絶対に大切にする!!!だから・・・お願い」

 

 

バカにされているくやしさからか?進級への不安と恐怖からか?ルイズは強く・・・とても強く、夜空に祈る。

 

 

……次の瞬間。

 

 

部屋の壁に大きな衝撃があった。

 

 

 

 

ルイズは衝撃で反対がわの壁まで吹き飛ばされた、壁に叩きつけられ切れそうな意識の中で彼女は見た。

 

中庭に崩れ落ちる壁と土煙の中にいる人影と夜空に浮かぶ双月を。

 

 

 

....第01話 まほうのくに 終

 

 

next第02話 早すぎた召還

 

 

 
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