No.1187947

艦隊 真・恋姫無双 169話目 《北郷 回想編 その33》

いたさん

桂花と会わせましたが、未だに話が進んでいません。6/8に誤字修正とネルソン達の会話に追加。

2026-05-31 00:38:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:73   閲覧ユーザー数:70

 

【 対顔 の件 】

 

〖 南方海域 連合艦隊 にて 〗

 

 

対峙する二人に小舟に乗り、この争いに割って入って来たのは、艦隊の提督である北郷一刀。 無論、彼一人の行動では到底間に合わない。

 

かと言って、金剛達は既に深海棲艦の対処に向かわせ、一刀の側にはいない。 無論、華琳達も桂花との約束で動く事はなかった。

 

だが、一刀に《 彼女達 》が救いの手を伸ばし、この場面へ間に合わせた結果だ。

 

漢女の超パワーを持ってすれば、男性一人と十メートル足らずの小舟なら、荒れた波だろうが少し遠くの距離だろうが何のその。

 

瞬く間に目指す場所まで、一刀を乗せた小舟を移動させる事ができた。

 

そう、できた…………のだが。

 

 

『もぉう、卑弥呼ぉ! ご主人さまの手助けは、このワ ・タ・シだけでぇ十分なのにぃぃ!!』

 

『がはははっ! 許せ、貂蝉! だーりんに内助の功とやらを見せつけなければならんのでな!』

 

『もしかしてぇ、卑弥呼……ご主人さまに手助けする傍ら、その美貌で惑わして自分に意識させようと!? 許さない、許さないわぁあああっ!!』

 

『確かに、うぬのご主人さまは魅力的だと認めよう。 だがしかし! だーりん一筋の儂に向かって、何という不埒な発言を投げおってぇえ!!』

 

 

女性が三人集まれば姦しいは有名な諺だが、漢女が二人揃えば……何とやら?

 

盛大に騒ぐ漢女達だが、その後に貂蝉曰く『話をつけに(物理的に)行ってくるわぁ』と言い放つと、二人で何処かへ消えてしまった。

 

 

そんな漢女達の話はさておき───

 

 

『はぁはぁ……ぐぅっ!』

 

『な、何故、此処に来るんだ提督! 深海棲艦達から反撃され、艦娘が危機に瀕(ひん)している状態なのに、艦隊の指揮はどうするんだ!?』

 

 

何とか間に合わせた一刀は、小舟を桂花達に寄せようと動かすが、蓄積した疲労と体力のためか舟の上で膝を突き、激しい呼吸困難に苦しむ。

 

その様子を見て驚きを隠せないまま、長門は桂花を放置し急ぎ一刀の元へ駆けつけ、自分の肩を貸して立たせながら、激しく問い詰めた。

 

 

『………お、俺が居なくても、金剛達が動いてくれるさ。 それに、今の状況が……ゲホッ! 不自然過ぎる。 な、長門こそ……何をしている?』

 

『彼女が……桂花が……黒幕だと語り、深海棲艦達から攻撃を止めたければ、自分を討て……と』

 

 

長門の口から、桂花を《 荀彧 》と呼ばず真名で呼ぶのを聞きつけ、思わず目を丸くする一刀だが、それよりも長門から聞いた言葉に反応した。

 

具体的には、自分の残り少ない体力を振り絞り、周囲に聞こえるよう大声で叫んだのだ。

 

 

『───華琳! 桂花の見えすいた芝居なんか……もう止めさせろ! 俺が憎ければ……俺だけを憎んでくれ!! だから……艦娘達には……!!』

 

『ちょっと、待ちなさい! かず……あんた、何言ってるのよ! 私がアイツらを操ってるって言ってるでしょう! だから、早く私を───』

 

『桂花こそ口を閉じろ! いくら華琳の命令とはいえ……命を粗末にしようとする、今のお前と……口を利きたくない!!』

 

『─────!!』

 

 

もし、前の世で、北郷一刀を知る者が居れば、この光景には、思わず驚愕するだろう。

 

桂花が一刀に対し、散々した悪口、嫌み、悪戯と数えきれない程の悪意に晒されたが、明確な拒絶的反応を起こすことは、ほぼ無かった。

 

そんな彼が、桂花の発言に対し怒りを滲ませ、一切の会話を拒否する態度を毅然に示す。

 

長門達にとっては、一刀の話は理解不能であるが、自分達側だと思う行動に安心する一方、桂花の唖然とした姿に何かしら思うことがあったが。

 

 

『頼む、一刻を争うんだ! 早く、早く……ゴホッゴホッ!!』

 

『提督! しっかりしろ!!』

 

 

大声で叫んだため体調を崩す一刀に、長門は桂花を放置して、直ぐ一刀に近づき気遣う。

 

そんな二人を見ながら、一刀の叫ぶ声を受けた華琳は哀しげな表情を浮かばせ、桂花に許可を得るために声を掛けた。

 

 

『…………桂花……』

 

『華琳様、私の事は……これで。 後は……どうか、お願いします』

 

『────わかったわ』

 

 

華琳は桂花から承諾の言葉を受けると、急ぎ各陣営に指示を送り付けるのであった。

 

 

◇◆◇

 

 

【 来訪 の件 】

 

〖 南方海域 連合艦隊 右側

 

   綾波型 駆逐艦 潮 視点にて 〗

 

 

《 ほんの少し前まで安全圏だった此処が、一気に抗戦の最前線になった 》

 

 

何を馬鹿な事を言っているのかと、思われるでしょうが、当事者の私として真面目な心境です。

 

提督さんと不思議な人達のお陰で、私達は命を繋げました。 そして、黒幕である南方棲戦姫も……あの赤い艦娘の方が倒したとか。

 

でも、そんな報告を信じ安心しきっていた私達に……深海棲艦の強襲を受けてしまいました。

 

気付いたのは、いつも冷静な不知火さんです。

 

 

『0.54海里付近(約1km)にて敵艦! そこの……急ぎ皆に知らせなさい!』

 

『て、敵艦の数は?』

 

『………凡そ……五十隻以上!』

 

不知火さんは、近くに居た艦娘に情報を伝えると、急報を全体へ知らせる伝令を送り出します。

 

聞いた何隻かの艦娘は『嵌められた』『やっぱり……ここで……』と悔し涙を流しましたが、今はそんな事を言って場合ではありません!

 

まずは当面の敵に対する準備が急務。 皆で急ぎ、対抗できるよう準備を行う必要があります。

 

身体が多少癒えたとはいえ、まだ艤装が壊れたままの僚艦の皆さんが、急ぎ攻め寄せる深海棲艦を迎撃すべき防御陣を編成させないと。

 

この報告を受け、私は今まで持っていた生き残れるという希望を捨て、捨て身の覚悟を固めるしか……ありませんでした。

 

そんな時、不意に肩を叩かれ俯いていた顔を上げると、不知火さんが私の顔を見て言ったんです。

 

 

『安全圏だと油断してしまったのが、不知火の落ち度ですね。 ならば責を取り、この身が倒れるまで防ぎに行きます。 潮達は此処で………』

 

『そ、そんなの駄目! これは不知火さんだけの責任じゃない! それに、そんな身体で行っても─────』

 

 

不知火さんの装備は、他の艦娘達に治療を譲って後にしたため、未だに半壊状態……つまり中破と言われる状態で、本来なら入渠行きなんですよ!?

 

だから、私は必死に止めたんです!!

 

このまま突貫しても無駄になると……後の事も、何も考えずに、ただ心配するだけで。

 

しかし、不知火さんは……違いました。

 

 

『────だからこそ、ですよ』

 

『……えっ?』

 

『このままでは、どのみち不知火達は壊滅。 これでは、助けてくれた司令達の力添えを無に返すことになります』

 

『………不知火……さん』

 

『それは、不知火の、いえ艦娘の矜持に掛け、絶対に許せない。 例え、運良く生き残っても、不知火は自分を許せず、結局は同じ結末になると』

 

 

私は……思わず自分の卑しさに恥ずかしくなり、泣きたくなってしまいます。 

 

こんな立派な艦娘が居るのに、臆病な私は、どうしても動けず、思わず劣等感を抱くしかなくて。

 

皆と同じように戦って皆を護りたいと思う反面、敵艦とはいえ、命ある者を轟沈する忌避感が強く、どうしても躊躇してしまう。

 

こんな私では……いつか……第七駆逐隊の皆、あの優しい提督さんにも……見捨てられ………

 

 

『要は適所適材。 そもそも、じっとしているなんて、不知火の性に合いませんから。 それと、不知火は潮の性格……嫌いではありませんよ』

 

『……………あ、ありがとうございます』

 

『貴女のような感性も大事。 不知火も……たまに思う事が。 この性格では……何かと誤解されやすく……い、いえ……何でもありません!』

 

 

少しは心が軽くなった私は、顔を背ける不知火さんに近寄り、同じように『嫌いじゃない』と伝えると、不知火さんは少し笑ってくれました。

 

 

『それでは、御武運を……潮。 また、生まれ変われたら、あの優し過ぎる司令が居る鎮守府で……逢いましょう!』

 

『不知火さんこそ、御武運を。 必ずお逢いしますね。 提督さんの居る……鎮守府で!』

 

 

そう言葉を交えた不知火さんは、『不知火……出る!!』と叫びながら、少し先の海原に現れた深海棲艦へと突貫しようとしました。

 

 

────そんな時です。

 

 

『あ、あのぉ……す、すいましぇ……あぅ、噛んじゃった……』

 

『あわわわ……ひ、雛理ちゃん!』

 

 

戦場という殺伐した場所に、全然似つかわしくない、この可愛いらしい《 彼女達 》から、とある提案をされたのは。

 

まさか、あんな事をするだけで、深海棲艦が壊滅するなんて、その時は夢にも思いませんでした。

 

 

◆◇◆

 

 

【 誤解 の件 】

 

〖 南方海域 連合艦隊 左側 〗

 

 

『行くぞっ! Nelson Touch!!』

 

『援護しますっ! えっ……左舷、弾幕薄い! 何をしているんですかっ!?』

 

『何でしょうかぁ? ポーラは知りませんよぉ、ザラ姉さまの砲塔に、ヒック! 誤ってお酒なんか掛けること、ヒック! しませんからぁ~!』

 

 

此方は、元々援軍として送られたウォースパイト率いる艦隊が指揮を取り、深海棲艦からの攻撃を防いでいる。

 

本来なら個々に動き、危ない艦娘達を救助するべきなのだが、彼女達は大本営所属のエリート。

 

同じ艦娘とはいえ、練度も連携も桁違い。

 

何より、このような境遇を与えた大本営に不満を持つ者が多数居るため、彼女達が艦隊を組み、遊軍として動くのが、都合が良かったからだ。

 

 

『チッ、Small fry(雑魚)ばかりで歯応えがないではないか。 これでは、余が駆けつけた意味がない。 そう思わないか、Ladyよ?』

 

『It doesn't sound very reasonable(無茶を言わないで)……この艦隊と合流して日の浅い私が、大事な場所を任されるわけないじゃない』

 

『しかし、このようなWonder(不思議な)戦いを経験するは、二度と無い……ん、どうしたグラーフよ?』

 

 

深海棲艦達の攻撃が一時的に止まった時、皆が少しだけの休憩に安堵の表情を浮かべたが、ただ一隻だけ別の方角を望んでいた。

 

グラーフ・ツェッペリンが、何時もの半眼気味の険しい目付きではなく、大きく見開いたグレーの瞳で、何かを懸命に眺めている。

 

しかも、普段は冷静な彼女には珍しく、身体が小刻みに震えていた。

 

 

『あれは………Einherjer(エインヘリャル)……!!』

 

『Einherjer……どこかで聞いた覚えが……えぇい、考えるより聞いた方が早い! グラーフ、どう意味だ!? 疾く(とく)と応えよ!!』

 

『Einherjer……ワルキューレに運ばれた勇敢なる戦士。 Ragnarök(ラグナロク)で戦う為に、天界で備える兵士になった者達のことだ……それが!』

 

 

グラーフの目に映る彼らは、少し前まで見慣れなた三國の鎧姿をした正規兵達ではなく、黄色の頭巾を被った軽装の荒々しい男達。

 

しかも、聞き慣れない奇妙な掛け声を発しながら、勇猛果敢にも立ち向かって行く。

 

彼方の戦場は特に激闘で、見れば南方棲鬼が参戦していた。 それでも、件(くだん)の男達は立ち止まるどころか、果敢に攻めかかって行く。

 

まるで、絵画のような様子を見ながら、グラーフは言葉を続けた。

 

 

『その勇敢なる戦士達が……私達艦娘と共闘している! まさか、Ragnarök(ラグナロク)とは、深海棲艦達の戦いを示していたのか!!』

 

『しかし、Ragnarokでは、神々と共に戦うと言いますよ。 ですが、この戦いに肝心の神々は、何処にも居ませんが?』

 

『…………いや、神は存在する! 日向が度々言っていたぞ! 瑞雲神という……Asklepios(アスクレピオス)のような者が居ると聞いた!!』

 

 

ウォースパイトの問いに、一瞬は疑問を覚えたグラーフだったが、盛んに日向が叫んでいた神の名前を思い出し、自分の推測を確信へと変えた。

 

そして『かの有名な神話の戦いに、まさか自分が!』……と、感動のあまり大粒の涙を流し、その光景を食い入るように見つめだした。

 

 

またしても奇妙な勘違いが始まったが、当然ながらグラーフだけではない。

 

 

英国の艦娘達も───

 

 

『なあ、Ladyよ。 あの兵士達は……』

 

『ええ、私も思いました。 もし、この推理が正しければ……予想外にもほどがありますけど。 だけど、《 真実は何時も一つ 》なんです!』

 

『やれやれ、あの堅物が……こうも変わるとは、な。 今度は、大人の頭脳を持つという、有名な某少年探偵か』

 

 

グラーフが驚愕と感動で立ち止まっていたが、英国出身の二隻は違った考えをしていた。

 

現に、ウォースパイトの頬からは、言葉の割りには、緊張感に寄り一筋の汗が頬を伝わり落ちる。 

 

彼女の推理では、どうやら重大な人物に辿り着いたようであり、次の言葉を出すのに、一呼吸入れて、ようやく口を開いた。

 

 

『私の灰色の脳細胞が囁く(ささやく)のです。  Knights of the Round Table(円卓の騎士)が関わっている、その可能性があると』

 

『ふむ、他の兵と明らかに違う装備を装いつつも、高い士気を保ち、怒涛の攻撃を繰り出し、組織的な動きで防備を固める……可能性はあるな』

 

『湖の乙女達との関連から考えますと……彼の騎士Sir Lancelot( サー・ランスロット )……円卓の騎士最強と言われた英雄が関わっていると』

 

 

ここで落ち着くために、ウォースパイトは一呼吸を更に加えるが、このくらいならネルソンも予測できたので、驚く話ではない。

 

英国では、知名度が極端に高い有名な物語。 

 

だから登場人物も、その関係も、更には出来事さえ、小さな子供でも知っているのだから。

 

 

『彼は湖の騎士(Lancelot du Lac)と異名されるほど湖の乙女とは親密な関係。 このような荒事があれば、呼ばれるのは必然と言えます』

 

『確かにそうだが……それだけで判断していいのか? まだ確実とは言い切れないぞ?』

 

 

意地悪く、その判断では決め手を欠けると、何時ものように軽口を叩くと、ウォースパイトは表情すら変えず、極めて静かに答える。

 

まるで、今の話は前座であり、本命は今から始まると言わんばかりに、だ。

 

 

『いいですか、ワトスン君?』

 

『おい、由緒ある余の名前を、勝手に名探偵の友人にするな。 どちらに対しても失礼だ』

 

『考えてみて下さい。 あの物語で湖の乙女達が力を貸した人物。 つまり、数いる円卓の騎士で、誰に一番協力的だったと思います?』

 

『今度はスルーときたか。 仕方がない……真面目に答えるとすれば、それは《 サー・ランスロット 》という流れじゃないのか?』

 

 

すると、ウォースパイトは『チッチッチッ』と人差し指を左右に振り、《 違いますよ 》と意思表示した後、更なるヒントを提示してきた。

 

 

『湖の騎士、以外にですよ。湖の乙女達の一族であり、聖剣を与えられ、数々の偉業を成し遂げた者……その方が、北郷提督だったと考えたら?』

 

『それは…………おいっ、まさか!? 北郷が──King Art……うぐっ!?』

 

『Be quiet!( 静かに!) Don't say another word!( それ以上何も言わないで !)』

 

 

ネルソンは急に口を塞がれ驚くが、口を塞いだウォースパイトの様子も尋常ではない。

 

誰かの視線を気にするように辺りを見渡し、ネルソンに《 静かに 》とジェスチャーをしてから、ようやく口から手を離した。

 

 

『たった今、私を支援してくれる艦娘から通信連絡がありました。 どうやら、彼女が姿を現したそうです。 …………北郷提督を連れて』

 

『…………あのSuspicious person(不審者)か?』

 

『ひ、否定は難しいですが……かなりの実力者なのは間違いありません。 対応を間違えれば、私達では瞬時に終わりますから』

 

 

ネルソンが嫌がるのは、ウォースパイトが説明した結果である。

 

南方棲戦姫と交戦した時、ネルソンは相手の術中に嵌まり大破したため、赤い艦娘こと貂蝉を見ていない。 

 

他の仲間達、グラーフ達も一緒に居たため同じ。

 

だが、ウォースパイトは目撃した艦娘の一隻。 

 

南方棲戦姫から受けた絶望、瀬戸際での救出、そして圧倒的な戦闘からの、独特な衣装形態の披露まで、しっかりと特等席で見学したのだ。

 

まあ、ネルソンが警戒するのも、凄く理解できる。

 

もし、他の艦娘が───

 

 

☆ Gorgeous(とても綺麗な)艦娘が、南方棲戦姫を圧倒的な強さで蹂躙、事が済んだ後に魔法が解けて、筋肉肥大の破廉恥な大男になった ☆

 

 

──などと言い出せば、誰だって警戒する。 

当然、ウォースパイトだって対応は同じだ。

 

実際に見なければ、こんな物である。

 

 

『…………こんな時に、ブリティッシュジョークだと? いくらLadyでも……』

 

『考えて見て下さい。 《 サー・ランスロット 》の逸話には、彼が変装して仲間を救う話があります。 ならば、湖の乙女も───』

 

『…………あったな。 しかし……美女から……あの姿……か。 湖の乙女達の美的感覚を疑うべきか……いや、万が一の見間違えの線も……』

 

『Shhhh!(し-っ!) 私の持つRegalia(レガリア)に誓って、これは本当の話なんですから! それよりも、特に重要なのは……』

 

 

  更に声を潜めたウォースパイトが

       伝えた言葉は────

 

 

『彼女?は……自分を《オトメ》だと……この国の言葉で艦娘達に語ったらしいの。 多分……遠回しに、自分の正体を示唆してきたのよ』

 

『………………………』

 

『そして、明かした理由は……メッセージ。 北郷提督の正体や湖の乙女を探る、私やネルソンに向けて───Ally or enemy?(味方か敵か?)と』

 

 

その言葉に、流石のネルソンでも驚きのあまり、開いた口が塞がらず、唖然とするのみ。

 

そんな困惑状態のネルソンに、ウォースパイトは更なる情報を追加した。

 

 

◎ 《 オトメ 》を名乗る者は、もう一人居る。 それも、同じく際どい衣装を着用状態。

 

◎ 謎の白服姿の少年二人も居るが、一人は怪しい魔術を使い、もう一人は武に秀でている。

 

 

情報元は、短期間ウォースパイトに給仕した、金髪クルクル巻き名家のお嬢。 詳しくは話せないがといいつつ、何故か自慢気に説明してくれた。

 

指南したことは、そつなくこなす期待の新人なのだが、何かにつけ『オーホッホッホ』と、高笑いするのが……玉に瑕である。  

 

 

全部を聞き終わったネルソンは、頭を抱えた。

 

話の内容からして、湖の乙女、大魔術師Merlin(マーリン)、サー・ランスロットが、姿を変えて見守っている、と判断が出来てしまうのだから。

 

頭の中を高速処理し、だいたいの内容が把握できたネルソンは、顔を引きつり笑いをしつつ、ウォースパイトへ近付いて尋ねた。

 

 

『いったい、この国は……どうなっているんだ?』

 

『国じゃなく、多分……北郷提督の運命かしらね。 成るべくして成したという。 あの方も聖なる剣を抜く運命に導かれ、即位されたのだから』

 

『────やれやれ、湖の乙女に続いて、今度は伝説の円卓の騎士関係か。 母国に帰ったら、どう報告すればいいか……早くも頭が痛むな』

 

 

静かに語るウォースパイトだが、別に彼女の方が豪胆という訳ではない。 腰を抜かすほど驚いているが、艤装のお陰で気付かれないだけ。

 

それに、他人が自分より驚いた様子を見て、思わず冷静になるという、あの反応である。

 

もし、彼女が最後まで推理物のパクりをしていたら、こう最後を締めくくったであろう。

 

 

────『不可能な物を除外していって残った物が……たとえどんなに信じられなくても……それが真相なのよ!!』───と。

 

 

こうして、勘違いは更に雪達磨式に増えて行くのだが、その話は別の機会にでも。

 

 

◆◇◆

 

【 依頼 の件 】

 

〖 南方海域 連合艦隊 左側 〗

 

 

そんな三隻が勘違いの真っ最中、彼女達の後方で、ちょっとした言い争いが開始していた。

 

 

『もう、ポーラったら! こんな大事な時に何で飲んでるのよ!? ポーラの所為(せい)で、私の連装砲が上手く作動しなくなっちゃうし!!』

 

『だってぇ……砲撃受けた所が痛くて、痛み止めで呑んだらぁ、ついぃ~』

 

『砲撃受けたって、まだ戦闘開始していないじゃない! そんな嘘で誤魔化せられるとでも!?』

 

『姉さまぁ、この国では《 酒は百薬の長 》と呼ばれる、万能のお薬扱いなんですよぉ? だからぁ、精神的辛さには、この薬が必要なんです!』

 

『そう……そんなに薬が欲しいなら、《 良薬口に苦し 》という通り、私のお説教と言う名の良薬を後で沢山浴びせてあげま───誰ですか!?』

 

 

そんな場違いな《 日常会話 》が行われていたが、流石に戦場ゆえに、最低限の警戒をしていたザラが、後方より近付く誰かに気付いた。

 

ポーラも姉の様子を瞬時に察知し、何時もの酔眼から一気に険しい目付きに変え、姉の後方に居る者に向け、艤装を展開させた。

 

緊張が走ったが、此方に近寄る人物……美少女は屈託無い笑顔をして、二隻へと語り掛ける。

 

 

『…………いやはや、これでも気配を隠して来たんですがぁ、やっぱり旦那様……じゃなくてぇ、コホン! 一刀さんの味方になる方々ですねぇ♪』

 

『『 ……………………… 』』

 

 

後方より来た人物は、眼鏡を掛け緑色の髪を棚引かせて、ニッコリと笑いながら歩み寄る。

 

特に、艦娘であっても中々見た事が無い、その豊かな胸部装甲は、動く度に別の生き物の如く、激しく上下に、細かく左右へと動いた。

 

その動きは、言い争っていた二隻の目を、完全に釘付けへとさせたのである。

 

彼女は、呆然とする二隻の警戒範囲を易々と踏み込み、とても興味深げな顔を見せた後、笑顔で自分の名前を告げた。

 

 

『そう言えば、まだ自己紹介がまだでしたねぇ。 隠は~孫呉に仕える周公瑾の弟子になります、姓は陸、名は遜、字が伯言と申しますぅ』

 

『………姉さまぁ、ポーラ……ちょっと、呑み過ぎたかもぉ? おっ○いっがぁ~何か喋ってる───ウグッ!? グググッ!?!?』

 

『Mi dispiace tanto!(本当に御免なさい!) 妹が馬鹿な事を申し上げて、どうか、どうか許して下さい! 後で、思いっきり叱りますからっ!』

 

 

当然、この二隻にも……ネルソン達がどの様な者か説明してあったのだが、やはりと言うか、安定と言うべきか、ポーラは忘れていた模様である。

 

ポーラの口を塞ぎ、慌てて謝罪するザラに、陸伯言《 真名 隠 》がにこやかに応えた。

 

 

『まあまあ、よく言われていますからぁ大丈夫ですよぉ。 特に貧乳党から目の敵にされてぇ、このくらいなら全く気にしていませんからぁ~♪』

 

『…………………』

 

 

それから紆余曲折あって誤解が解けた後、ネルソン達も呼びよせ、この来訪者の件を話した。

 

勿論、遊軍といえど、今までのように近付く敵だけ相手する、片手間の戦闘行為ではすまない。

 

この唐突な来訪者の話を腰を据えて聞くため、目立つ敵艦隊を急ぎ潰し、前線に居る艦娘達に援護が必要な時は直ぐに呼ぶよう言い含めた。

 

こうして、陸伯言との話し合いが始まった。

 

 

『────って事なんですぅ。 御理解、いただけましたでしょうか~?』

 

『……………本当に、それだけでいいのか? 余達が、それだけをすれば……』

 

『はぁ~い、それだけして頂くだけでぇ、私達も貴女方も~両方とも益がありますのでぇ。 それにぃ、あそこの彼らも耐えてくれますから~』

 

 

狐につままれた話であるが、頼まれた活動は全く問題なく、これなら陸達の陣営だけ出来ること。  

 

つまり……頼まれる必要が全くない。

 

しかし、これを行えば、自分達の活躍が上積みされ、恩賞の価値が上がる。 上がれば、望む物も増えていく……例えば、配置転換の希望とか。

 

 

『…………いいですね、何も問題はないかと。 皆さんは異論は?』

 

『別にない』

 

『余もないな』

 

『勿論、私達も………』

 

『恩賞を貰えばぁ、バローロとバルバレスコ……ああっ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノも忘れちゃ──いっ、痛い痛い痛いっ!!』

 

 

そんな感じで意見が纏まり、行動を起こすことになった。

 

頼まれた事は───《合図が来たら、旗を揚げて欲しい》という物。 しかも、これを行うと、眼前の敵が混乱状態になるという。

 

その合図も、僅か十分後。

 

話の内容は簡単な事ではあるが、どうして結果がそうなるのかが理解ができない。

 

寧ろ、それだけで大丈夫なのかと、逆に心配になるのだが、心配無用とばかりに、陸伯言は『大丈夫ですからぁ♪』と胸を叩く。

 

その時に、激しく揺れ動く胸部装甲を見た艦娘達は、思わず自分達の物を手に当て、つい確認してしまったという話であった。

 

 

 

 

○●○ ○●○ ○●○

 

 

恋姫無双や関連ゲームで、曹操役を演じられた乃嶋架菜様が、今年3月、薬石効なくご逝去されました。

 

この小説を書くため、ネットで検索していた最中に見つけ、思わず唖然としてしまった次第です。

 

恋姫無双関連の書かせて頂いている、不肖の身ですが、この場を借り謹んで哀悼の意を表します。

 

長い間、楽しませて頂き、本当にありがとうございました。

 

 

 

 
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