No.1188783

艦これ 小説

ましゅうさん

昔、pixivで投稿したしたものをこちらで再掲します

2026-06-15 21:22:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:33   閲覧ユーザー数:33

 桜の花びらが舞い散るころ、某鎮守府執務室にて、提督が難しい顔をしながら山になった書類の中の一つに目を通していた。

「やっぱり鎮守府(ここ)が落ち着くが、一週間でこの書類の山、ふむ・・・どうしたものか・・・」

と思いつつ、窓から外を見ると暁たちがバレーボールして遊んでいた。

「今日も平穏でいいな、毎日こんな日が続けばいいがな・・・」

と言いつつ席に着き、書類に手を伸ばした時、ドアを叩く音がした。

「提督、矢矧、失礼します」

「あ、ああ、どうぞ」

「提督、大本営に一週間の出張お疲れ様でした、今現在の資材・修復材等の在庫及び必要な物品のリスト

です、後ほどご確認を」

「ありがとう、後で確認するよ、出張中に変わりはなかったか?」

「何事も無く皆元気です、ところで、難しい顔をしておられましたが、何かでありましたか?」

矢矧が不思議そうな顔をして提督に尋ねた。

「いや、先週の大本営での会議の中で話があったのだが、ドイツ沖で不穏な動きがあったらしい」

「何かあったのですか?」

「先月、ドイツ沖でビスマルクを筆頭に演習を行っていたのだが、その時、正体不明の潜水艦がいた」

「潜水艦?ですか?ドイツでしたらUボートではないのですか?それとか、演習の標的とか・・・でもないですよね」

「確かにそうだが、今回の演習にはUボートは参加していなかった、緊急出撃の命令も出ていない」

「では、他国の潜水艦とかでは?」

「ビスマルクが他国語で話をしたみたいだが、全く反応がなかったらしい」

「じゃあ、もしかしたら・・・」

「考えたくもないが、新種の深海棲艦の可能性がある、今のところビスマルクが見た以外に他国からの報告

も来てないし、念のため用心してくれと言われたよ」

「そうでしたか、こちらも気を付けないといけませんね」

 提督が大本営であった話をしていると、ドアを叩く音がした。

    ―コンコン―

「提督、第七駆逐隊 朧・曙・漣・潮 入ります」

「どうぞ」

「第七駆逐隊、警備任務終了して帰投しました、何も異常ありませんでした」

「ご苦労様」

「了解です!司令官、それでは」

「は!?たったそれだけ!?クソ提督」

曙が提督に詰め寄った。

「え!?あ、ああ、わかった、間宮に連絡しておくから好きなもの頼んでいいから」

と提督が言って曙を宥めた。

「はぁ~」

 曙たちが去った後、提督が大きなため息をついて机に沈んだ。

「ふふ、提督も大変ですね。お茶、淹れましょうか?」

「ありがとう、曙ももう少し口が悪くなかったらいいけどな」

 と苦笑しながら言いつつ、お茶をすすった。

「あ!朧ちゃんったら、またカニを置いて帰っちゃった、提督、ちょっと行ってきますね」

「はは、しかし・・・あの深海棲艦、もしかしたら・・・」

 矢矧を見送った後、ふと考えながら提督は書類の山と格闘を始めた。

  

     ―ガラガラガラ―

「あら、朧ちゃんたち、いらっしゃい」

「間宮さん、こんにちは」

「提督から話は聞いているわよ、曙ちゃん、あんまり提督を困らしてはダメですよ?優しくても「提督」

のトップなのですからね?」

「そ、そこは、分かっているわよ」

「さ、お話ここまで、皆さん、何を食べられますか?」

 と言いながら、朧たちにお品書きを渡した。

「じゃあ、曙は、餡蜜」

「では漣は、白玉ぜんざい」

「潮は、苺大福三個、下さい」

「朧はわらび餅を」

「分かりました、少々待っていて下さいね」

 間宮は注文を聞き、厨房へ入っていった。その時

「あ!」

「どうしたの?朧」

「遠征から帰った時に、提督の部屋に、カニを置いて来ちゃった」

「あら、カニってこれでしょ?」

 矢矧がカニの入ったバケツを持って来た。

「あ!ありがとう!矢矧さん」

「カニを忘れちゃダメよ?それにしてもどうしたの?」

 と矢矧が朧に尋ねた。

「このカニですか?数年前に艤装整備していたら、紛れ込んでいてそれから飼っています、いつも遠征とか演習には連れて行きます」

「そうですか、今度から忘れないようにね」

「はい気を付けます」

そう言いながら笑っていた時、間宮が注文の甘味を持って来た。

「はい、みんなお待たせ、あら矢矧さん、こんにちは、何か食べて行かれます?」

「こんにちは間宮さん、まだ私は仕事がありますので」

「そうですか、秘書艦も大変ですね、あ、そうだ、先ほど伊良湖さんから、長崎名物のカステラを頂いたので良かったら、提督とどうぞ」

「すいません、間宮さん、こんな高級な物頂いて」

「いいですよ、提督に差し入れに持っていこうと思っていた所だったので」

「え?カステラって何ですか?」

「カステラですか?甘くてしっとりとして美味しいですよ、伊良湖さんからたくさん頂いたので食べて下さいね」

「やったぁ~!」

「それでは、皆さん、またね」

と言って矢矧が店を出るのと同時に、武蔵が入ってきた。

「矢矧か、最近提督の姿が見えなかったが、元気なのか?」

武蔵がすれ違いざまに矢矧に言った。

「ええ、元気ですよ、先週は大本営で会議があったから居なかったのです、今は部屋で書類と格闘していますよ」

「あぁ、そういえば、前に言っていたな、忘れていたよ、提督によろしく」

「ええ、言っておくわ」

そう言いながら、矢矧は執務室へ戻っていった。

「お、今日は第七駆逐隊か、みんな元気そうだな」

「あら、いらっしゃい武蔵さん」

「今日は、桜餅三個とみたらし団子二本貰えるか?」

「いいですよ、でも珍しいですね、武蔵さんが桜餅を食べるなんて」

「あぁ、この時期は丘で大和がスケッチしているから差し入れと思ってな」

「あの丘は見晴らしがいいですからね」

「ありがとう、間宮またな」

と言って片手で挨拶をしながら間宮の店を後にした。

 

 

 大和はスケッチブックを手に歩いていた。

「ん~、やっぱりあの場所で描こうかしら」

と言いながら、丘の上へと歩いていった。鎮守府本館から丘の上にある枝垂れ桜までは歩いて数分程のところにある、大和が一番気に入っている場所で鎮守府が一望できる場所だ、大和が来てから、桜の木を伐採して、海上監視塔の設置を考えていた提督に猛抗議して断念させた程である。

「やっぱり、今の時期はここが一番ね、桜が散って少し寂しいけど」

と思いつつ大和はスケッチブックを広げ桜の絵を描きだした、そして暫くすると武蔵が現れた。

「よ、いい絵描けているか?ほれ、差し入れだ」

「間宮さんの桜餅かぁ、ありがとう武蔵、でも珍しいわね、ここまで来るなんて」

とスケッチを止めて差し入れの桜餅を受け取り、ほおばった。

「折り入って話があってな」

「何?話って」

「ああ、ビスマルクから話は聞いているだろ?」

「ビスマルクさんから?先月のドイツ沖の事?」

「そうだ、あの後からビスマルクから連絡が来てな、まだ提督にも話していないことだ、たぶん提督は感づいていると思うが」

と武蔵が顔を曇らせて言った。

「どういう事?」

「どうやら先月遭遇したのは潜水棲姫らしい」

「潜水棲姫かぁ、ここに来ると厄介ね・・・」

「そうだな、そうなると出番は無いな、久しぶりに戦闘かとおもったが」

と武蔵が悔しそうに言う。

「いいじゃない、私たちが出撃しないということは、平和だっていう証拠だから」

「ま、確かにそうだが、少し気になる事があるのだが・・・」

「何?気になることって」

「実は、ビスマルクから聞いたのだが、去り際に「ヤツを必ず沈めてやる」と言い残して消えて行ったらしい、ビスマルクもこの事は誰にも言っていないみたいだ」

「それって、もしかして」

「ああ、おそらく提督の事だろう、潜水棲姫の右側面に大きな傷があったらしいから、まず間違いない、提督が唯一撃破出来なかった敵だ」

「だったら、近いうちにの近海に来るわね」

「まぁ、出番は無くても艤装の手入れはしっかりとな、大和」

「言われなくても手入れはしっかりしているわよ?」

大和も最後の餅を食べながら言った。

「やはり大和は頼もしいな、じゃあな」

「また後で、武蔵」

武蔵が去った後、大和はため息をついた。

「ふぅ、今は考えても仕方ないわね、それにしても、武蔵・・・食べたら片づけて帰ってほしいわね」

そう言いながら片づけ、大和はスケッチの続きを始めた。

「矢矧、帰りました、伊良湖さんからカステラです。」

「伊良湖から?長崎のカステラかぁ、懐かしいなぁ、じゃあ一緒に食べようか」

提督は書類を片づけ、カステラを開けようとした時、慌てて廊下を走る音がした。

 

 

    ― ドタドタドタ・・・ガチャ! ―

「はぁ、はぁ、はぁ、長良、至急提督に用件があり帰投しました!」

「きゃっ、いきなり入ってきたのでびっくりしました、長良さんどうしたのですか?慌てて入ってきて」

矢矧は慌てて長良にお茶を差し出した。

「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ふぅ、すみません矢矧さん、いきなり入ってきて、ですが提督に報告がありまして来ました」

「そんなに慌てて、長良、どうした?」

「すみません、提督、ノックせずに入って来てしまって、第八駆逐隊のみんなと対潜警戒で出港したのですが、ここから南西百五十海里の海域で国籍不明の潜水艦を発見し、他国語で話しましたが反応が無く、対潜迎撃準備をしたところ、敵艦が逃走しました。」

「提督、まさかそれって・・・」

「長良、その潜水艦の特徴は覚えているか?」

「特徴ですか?伊号・呂号ぐらいで、あとは、船体に傷があり、目が青白い色でした。」

「提督?どうされました?顔色悪いですよ?」

「あ、ああ大丈夫だ、長良、霧島に一六○○時に全員を作戦会議室に集まるよう伝達してくれ」

「了解しました、それでは失礼します。」

長良が執務室を去った後、矢矧が尋ねた。

「提督大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。」

「提督、私に何か隠していますね?話していただけますか?」

「矢矧には全てお見通しか」

「いいえ、全てではないですが、何となくそのような雰囲気がしたので」

と矢矧が苦笑しながら言った。

「随分昔の話だ、当時俺はある提督の下で副官見習いとして働いていた、その時401と俺は鎮守府内では、ちょっとした噂になっていてケッコンまで秒読みとまで言われたほどだった。お互い全く気にせず、偶に辺りを一緒に歩いたり、食堂で食事をする程度だった。

ある日、俺と401が提督に呼び出され二人の関係を問いただされた、俺と401は、はっきりとした釈明を訴えたが聞き入れてもらえず、二人とも一週間の謹慎処分になった。その時俺は、提督に対して不信感を抱いていた、当時提督には黒い噂しか流れてこなかった、謹慎処分が明けた後、401の部屋に行くと誰も居なかった、168に聞いたら二日前に提督自らの手で雷撃処分したと聞いた」

「提督・・・」

「その後、その一件と提督の不祥事が発覚し解任され、後任に俺が就いた、それから数年後、近隣海域に潜水棲姫による襲撃事件が起こった。」

「その様な事があったのですね」

「その潜水棲姫が401だったと判るまで時間が掛ったよ、急遽討伐行ったが失敗した、討伐で轟沈した艦は無かったが、負傷した艦が一人引退した、私が上手く指揮を執っていたならそんな事にならなかったと思っている、それだけが唯一の心残りだよ」

提督が俯きながら言った。

「提督、が付いていますから大丈夫です、最後まで頑張って行きましょう」

矢矧が提督の手を握って言った。

「ああ、そうだな、よろしく頼むよ」

 

 

   ―  一六○○時 作戦会議室  ―

「あぁ、もう!今日は休みで飲んでいたのに、なぁ、那智」

隼鷹が酒瓶を手にしながら那智に言った。

「確かに、今日ぐらい大目に提督も見てくれよなぁ」

那智が隼鷹から注いでもらった酒を飲み干しながら言った。どうやらこの二人は午前中から飲んでいたらしく、かなりの量を飲んでいるが顔に一つも出ていない、鎮守府の中では酒豪である。

「え~、作戦会議?怠いなぁ、古鷹から聞くから寝かせてくれよ~」

眠たそうな声で加古が言った。加古は昼寝中に起こされ、少し機嫌が悪かった。

「加古、もうすぐ提督が来るから起きて」

古鷹が言いながら、加古のスカートの裾を引っ張った。

「ちょ、わ、分かった!分かったから!古鷹!スカート引っ張らないで~」

加古は慌てて古鷹に言っていたら、提督が入ってきた。

「みんな、忙しいところすまない」

提督が神妙な面持ちで言った。

「提督、何があったのじゃ?」

筑摩が言った。

「実は、午前中にここから南西百五十海里の海域で国籍不明の潜水艦を発見したと、対潜警戒をしていた部隊から報告が入った、よって一七○○時から第一種警警戒態勢、明日○六○○時に偵察として、彩雲及び水上偵察機を発進させて敵の位置情報を探る、情報によっては艦隊編成を行い出撃する。艦隊編成は明日発表するので各自準備を怠らないように、以上、解散!」

「了解しました!」

提督の言葉に答えるように艦娘たちが返事をした、そして、提督が部屋出た後艦娘たちが席を立とうした時、矢矧が言った。

「皆さんすいません、お話があるのですが」

「どうしたの?矢矧」

阿賀野が言った。

「実は・・・」

矢矧は、提督から聞いた事件と今回の出撃のことをすべて話した。

「そっかぁ、あの時のが来たのかぁ、俺も出撃していたから覚えているぜ、逃げられちまったが」

天龍が懐かしそうに言っていた時、明石が入ってきた。

「あ、皆さん此処でしたか、先ほど烈風改・彗星一二甲・流星改の手入れが終わったので赤城さんたちに発着艦試験をお願いしたいのですが」

「もう手入れ終わったのですか?早いですね」

赤城がそれぞれを受け取り言った。

「以前に、発着艦が少し難しいと聞いていたので少し改修しておきました」

「それだ!!」

「え!?」

いきなり木曾が声をあげ、みんなが驚いた。

「ど、どうしました?木曾さん」

神通が恐る恐る木曾に聞いた。

「ああ、驚かせてすまん、明石、今から四式水中聴音機と三式爆雷投射機、それに酸素魚雷の改修って可能か?」

「出来ない事は無いですが・・・、私一人ではちょっと」

明石が難しそうな顔で言った。

「五十鈴が水雷戦隊の装備の改修、水中探査なら手伝うわ」

「では、島風は魚雷の改修を手伝います」

「それなら、主砲を衣笠・青葉で改修を、その後に妙高が、またその後三隈が改修を手伝います」

そう言いながら、妙高たちが名乗り出た。

「では皆さん、装備改修の手伝いよろしくお願いします」

香取が言った後、五十鈴たちが明石の工廠で手伝いに向かった。

 

その夜、執務室では、書類の整理を終わらせた提督が物思いに耽っていた。

「明日の討伐は過酷になるな」

と呟きながら、机の引き出しから煙草を取り出し吸い始めた、提督は考えが行き詰まると、煙草を吸う癖があった。

「こんなところ矢矧に見られたら、怒るだろうな」

そんな事を思っていると、矢矧が入ってきた。

「提督、失礼します、あら、お煙草なんて珍しいですね、ですが館内は禁煙ですよ?今日だけは特別に許してあげますが、次回はダメですよ?」

矢矧は提督に言った。

「すまない、矢矧」

「明日は討伐ですからね、もちろん私も出撃ですよね?」

と提督に言った。

「ああ、明日の出撃はかなり厳しい戦闘になるだろう、矢矧には無理をかける」

提督が言うと、矢矧がおもむろに提督の背中から抱き付いた。

「!?」

「大丈夫です、みんな必ず帰還させます」

「分かった、頼んだぞ」

と言いながら提督は矢矧の手をそっと握った。

「了解です、では明日は早いのでこれで失礼します」

矢矧はそう言いながら執務室を後にした。

 提督は矢矧を見送った後、鎮守府を出てある所に向かった。

 

―カラカラカラ―

「いらっしゃいませ、あら提督さん、こんばんは」

愛想よく鳳翔がこえをかけた。ここは鎮守府正門から伸びる大通りの一角にある「割烹 鳳翔」かつて

鳳翔は艦娘随一の判断力・指揮力を誇っていたが、先の掃討作戦で負傷した為、自ら引退し、割烹を開い

たのであった、今では市内で評判の店になり、たまに艦娘たちが手伝いに来る程の繁盛ぶりである。

「鳳翔、久しぶりだな、元気そうで何よりだ、ん?龍鳳と加賀も来ていたのか」

提督は鳳翔に挨拶した後、龍鳳と加賀に声をかけた。

「あ、提督、お疲れ様です」

龍鳳と加賀が提督に敬礼しながら言った。

「今日、急きょ仕出しの連絡が入ってしまったので手が足らず、無理を言って龍鳳さんに来ていただいて

手伝ってもらっていました、加賀さんの方は料理の勉強に」

鳳翔が皿を片付けながら言った。

「申し訳ありません、着任直後なのですが、料理だけがどうしても苦手で、休みの日を利用して、たまに

鳳翔さんのところで勉強させていただいています、五航戦には負けたくないので」

加賀が鳳翔の後ろで気まずそうに言った。

「そうだったのか、それで加賀の腕前はどうだ?」

「はい、加賀さんは飲み込みが早くて、結構上達しましたよ、今では加賀さんの料理目当てに来るお客さ

んもいるくらいですから」

と鳳翔が加賀を見ながら言った。

「い、いえ、私なんて皆さんから比べたらまだまだです」

加賀が顔を赤くして恥ずかしそうに言った。

「お世辞じゃないですよ?今日も来たじゃないですか、加賀が作った「豚の角煮」目当てのお客さん」

龍鳳が加賀を冷やかすように言った。

「そうよ?私が作る「肉じゃが」に匹敵するぐらいの人気よ?確か少し残っていたから提督に食べていた

だいたら?」

鳳翔が言うと、加賀の顔がさらに赤くなった。

「ん?そうなのか?じゃあ頂こうかな?」

「あ、はい、では・・・」

と言いながら、加賀は鍋に残っていた角煮を器に盛り付けだした。

「提督さん、今日は、熱燗?それとも冷」

「じゃあ、熱燗で」

「はい、暫く待って下さいね」

と言いながら鳳翔は酒を温めだした。

「提督、どうぞ」

加賀は自分の作った角煮を提督の前に差し出した。

「ほぅ、美味しそうじゃないか、さっそく頂こう」

提督は出された角煮を一口食べた。それを加賀は固唾を飲んで見守った。

「うん、上手く出来ているじゃないか、味付けもいいし、肉の硬さも丁度いい、美味しいよ」

「お、お褒めに預かり、光栄です」

いつも冷静沈着な加賀が、提督に褒められ、返事が上ずってしまった。

「鳳翔さん、私、帰りますね」

龍鳳が鳳翔に言った。

「龍鳳さん、今日はありがとう、助かったわ」

「こちらこそ楽しかったです、それでは失礼します」

「おやすみなさい」

「では私も失礼します、ありがとうございました」

「料理で分からない事があれば、何時でも来ていいわよ」

「はい、その時はまたお世話になります、おやすみなさい」

加賀は龍鳳の後を追うように鎮守府に帰って行った。

「はい、熱燗どうぞ」

「ありがとう、鳳翔も一杯どうだ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

提督に勧められ鳳翔もお猪口を持って来た。

「提督さん、何かありましたか?」

鳳翔は言いながら、提督に酒を注いだ。

「まぁな」

と言いながら、今度は提督が鳳翔に酒を注いだ。

「提督さんが私にお酒を進める時は、大抵大きな作戦前ですからね、「今回の」事に関することですか?」

注がれた酒を飲みながら鳳翔は言った。

「そんなところだ、前回討伐出来なかったが復讐に来た、今度は確実に失敗は許されない」

提督は神妙な顔をしながら酒を飲んだ。

「私が言うのもおかしな事ですが、「今」と「昔」では装備も練度も進化していますし、前よりもた

ちも大勢いますから」

「確かにそうだが・・・」

「提督さん、どうかしました?」

「いや、また鳳翔みたいにならないといいな、と思ってな」

「いえ、私はあの時修復材を使えばすぐ直りましたが、正直あの時が潮時だと感じましので」

「そうか・・・」

提督はバツが悪そうな感じがしたが堪えて、酒を飲みながら食事をした。

「まぁ、私から言えるのは、はに居なくてはならないですから、たちと、この街の人

たちにも信頼されていますから、必ず生きて帰ってきてください」

「そうだな」

「それに、矢矧さんの事、好きなんでしょ?」

提督は鳳翔から突拍子もない事を言われて驚いた。

「ゴホッ、ゴホッ、な、なんでが知っているんだ!?」

「噂ですよ、噂、出所は知っているでしょ?知らないのは貴方と矢矧だけですよ?」

「かぁ、確かにあり得るな」

提督は、頭を抱えた。

「ふふ、今日はこのぐらいでお開きにしましょうか?明日は早いでしょ?」

「ああ、じゃあお代は・・・」

「今日は、私の奢りです、お代はいいですよ」

「いや、しかしそれでは・・」

「今日は特別です、明日の作戦に勝利した時に、みんなで来て頂ければ」

「そうか、すまない」

「吉報をお待ちしていますよ」

「わかった、じゃあ、また」

「はい、またお待ちしています」

そう言いながら、鳳翔は店先で提督見送った。提督は夜霧の中、鎮守府へ帰って行った。

 

―決戦当日―

 水上桟橋近くから水上偵察機、また滑走路からは彩雲が敵の動向偵察に向けて離陸し、空母たちが見

送った。

「いよいよね、も準備しますか」

「では、私と瑞鳳で偵察機との連絡を行いますので、何か情報が入ればすぐに」

「では、よろしく頼みます」

飛び立った二機を見ながら祥鳳が赤城に言い、赤城たちが作戦会議室へ向かった。

作戦会議室では、空母たちの到着を待っていた。

「お待たせしました、偵察機は無事離陸、祥鳳と瑞鳳で偵察機と連絡をとっています」

「分かった、では今回の出撃のメンバーを選出するが、五十鈴たちはどうした?」

と提督が問いかけた。

「五十鈴さんたちは今、明石の装備改修を手伝っています、もうすぐ到着すると思います」

「わかった、では、今回の討伐艦隊を公表する、第一艦隊は矢矧、阿賀野、村雨、夕立、春雨、五月雨の編成で潜水棲姫の討伐に向かう、第二艦隊は長門・陸奥・瑞鶴・翔鶴・龍田・天龍で戦艦が出現した場合に抜錨、第三艦隊は不測の事態に備えて赤城・加賀・飛鷹・隼鷹・秋雲・夕雲、第四艦隊は鎮守府

守備で大和・武蔵・祥鳳・瑞鳳・秋月・照月の編成で行う」

「了解しました」

提督の言葉に一同は提督に敬礼したその時、明石たちが入ってきた。

「失礼します、明石です、お待たせしました、五十鈴さんたちのお陰で装備の改修が終わりました」

「改修は出来たけど、時間が余り無かったから、数は最低限の数しか無いわ、大事に使って欲しいわね」

五十鈴が自慢げに言って、それぞれの艦隊に渡された。

「提督、祥鳳に彩雲から入電がありました、敵潜水艦は三隻、南西九十海里の海域で確認されました、

水上偵察機からは今は何も連絡はありません」

赤城が祥鳳から得た情報を提督に伝えた。

「了解した、それでは第一艦隊は装備を整えた後出撃し、敵潜水艦隊の討伐に出撃せよ!」

「了解しました!」

矢矧たちは提督に敬礼し、会議室を後にした。

「ねぇ、矢矧、いよいよ出撃よ」

阿賀野が桟橋を歩きながら言った。

「はぁ、阿賀野姉、少し浮かれすぎよ?もう少し気を引き締めてよ」

久しぶりの出撃にウキウキになっている阿賀野に、ため息を漏らしながら矢矧が言った。

「村雨さんたちも気を引き締めて、頑張りましょう」

「はい、矢矧さんよろしくお願いします」

「それではみんな、準備はいいかしら?」

「はい、準備万端です」

「では、第一艦隊抜錨!目標は敵潜水艦隊!」

矢矧の号令で第一艦隊は敵討伐に向けて出撃した。

「今日は晴れていいわねぇ」

「もぅ、阿賀野姉、緊張感は無いの?」

阿賀野の気の抜けた一言に、矢矧がため息をついた。

「阿賀野姉、今から言う事しっかり聞いてよ?村雨さんたちも聞いてくださいね」

「はい」

「では、今回は聞いた通り敵潜水艦の討伐です、作戦としては村雨さんたちが潜水艦の周りに爆雷を投射

しつつ私と阿賀野で魚雷を発射、水面まで出て来た所を全員主砲斉射で討ち取る作戦で行きます、尚、陣

形は単横陣で行います」

「了解しました」

「分かったわ、矢矧」

「阿賀野姉、本当に大丈夫かしら?」

矢矧は不安そうに言いながら、阿賀野見つめた。

「矢矧?何か言った?」

「何でもないわよ」

矢矧は話をはぐらかしながら潜水艦が居る海域へと向かった。

矢矧率いる第一艦隊が出撃した後、瑞鳳に水上偵察機から連絡が入った。

「提督、北百二十海里付近で敵艦隊を確認、戦艦二隻、軽巡二隻、軽空母二隻こちらに向かっている模様

です」

「了解、第二艦隊の準備はいいか?」

「全員準備完了、何時でも出撃出来るぞ」

提督の問いかけに長門が答えた。

「第二艦隊出撃!」

「第二艦隊、出撃するぞ!」

長門率いる第二艦隊が出撃していった。

 

 三時間後、矢矧たち第一艦隊は潜水棲姫たちが居る海域の近くに着いた。

「いよいよ、潜水棲姫が居る海域よ、全員四式水中聴音機を使用、敵の探索を行います」

「了解しました」

そして全員が四式水中聴音機で潜水棲姫たちを探し始めた。

「矢矧、ここから約半海里程の場所、深度は二百くらいかしら?」

「その様ね、ん?何かしら?」

「魚雷です!四、五本こっちに来ます!」

「全員回避行動!」

「了解!!」

全員回避した後、後方で魚雷が爆発した。

「ふぅ、危なかった、全員敵の居場所は把握した?」

「はい!!何時でも投下できます!!」

「それでは爆雷投射!!」

「了解!!」

矢矧の号令のもと、村雨たちが爆雷を投射した。

「阿賀野姉、魚雷打つわよ」

「わかったわ、何時でも打てるわよ」

「では、魚雷発射!!」

駆逐に続いて矢矧たちが魚雷を発射し、暫くしてから爆発音と共に大きな水柱が上がった。

「矢矧、当たったかしら?」

「たぶん潜水棲姫には、一、二発づつは各艦に当たったかしら?後の二隻は撃破したみたいね」

「矢矧、敵が浮いてくるみたいね」

矢矧たちが話していると、潜水棲姫が浮上してきた。

「イタイ・・・オ前タチ・・許サナイ・・アノ男ト・・沈メテヤル・・出テコイ・・」

「提督は来ない、私たちが貴女を葬り去る!!」

「分カッタ・・ダッタラ・・沈メ・・!!」

潜水棲姫が言った後、矢矧たち目掛けて魚雷を発射した。

「全員主砲斉射!!」

矢矧たちが踵を返すように潜水棲姫に向けて主砲を斉射した。

「うぅ!!」

「クッ!!」

潜水棲姫に主砲斉射が直撃した後、潜水棲姫の魚雷が矢矧に直撃しお互い中破の被害を受けていた。

「矢矧!大丈夫?」

「大丈夫よ、少々のかすり傷よ、あと五、六本の魚雷は耐えられるわ」

「オノレ・・許サナイ・・!!」

潜水棲姫はそう言い残し、逃げるかのように水中に沈んで行った。

「魚雷及び爆雷投射!!」

追打ちをかけるように魚雷と爆雷を放った。

その後、大きな水柱が上がった。

「全弾命中しました!」

五月雨が言った。

「! え・・・?もしかして?」

「どうしたの?」

夕立の声に春雨が言った。

「今、401さんの声が聞こえた様な気がしました」

「401さん?」

と阿賀野が聞き返したその後、潜水棲姫の残骸が浮かんできた一つを拾って村雨が言った。

「確かにそうかも、ほら、401のゼッケンがあるよ」

「確かに所々ボロボロになって見にくいけど、401って書いてあるわね、だけどどうして?」

五月雨が不思議そうに言った。

「とにかく敵部隊は撃破したから帰還しましょう」

「はい!!」

矢矧言った後、みんなは鎮守府に向けて帰って行った。その途中、矢矧は夕立に尋ねた。

「夕立さん、最後に声が聞こえたって言ってましたけど・・・」

「最後ですか?「みんなありがとう、提督によろしく」って言っていました」

矢矧の問いかけに夕立は曇った顔でいった。

「そうですか・・・」

矢矧はポツリと呟いて帰路を急いだ。

一方その頃、敵部隊と第二艦隊がお互いの出方を見ながら対峙していた―

「ついに来たか・・・ビッグ7の力、侮るな」

「ヲ級が二隻ですか、これなら行けそうですね」

「そうですね、では翔鶴・瑞鶴行きます!艦載機発艦!」

翔鶴・瑞鶴は流星改・烈風改を発艦させた。

「よし!制空権とりました!」

「では、ビッグ7の名に懸けて敵を一掃する為、着弾観測射撃を行う!陸奥、準備はいい?」

「準備は出来ているわ」

「では、射撃!」

長門と陸奥が敵艦に着弾観測攻撃を行った。

「私たちも行くわよ、瑞鶴!」

「では、全機発艦!」

翔鶴・瑞鶴が艦載機を発艦させた。

「天龍ちゃん、私たちも行くわよ、先に死にたいは誰かしら?」

「おう、世界水準を軽く超えてる俺の砲撃を喰らいやがれ」

龍田と天龍も砲撃を開始した。

「着弾観測成功ね」

 長門・陸奥の着弾観測攻撃が成功し、戦艦二隻が大破、その後の龍田・天龍の攻撃で敵戦艦は撃沈し、

翔鶴・瑞鶴の艦載機攻撃で敵軽巡も撃沈した。

「やっぱ硝煙の匂いは最高だなぁ」

天龍が敵を沈めた後の余韻に浸っていた。

「天龍ちゃん、まだ敵が残ってるわよ?」

「ああ、一気に片付けようぜ」

「では、主砲斉射!!」

長門の号令で陸奥・天龍・龍田が残りの敵に向かって射撃し敵艦隊を討伐した。

「終わったな」

「そうね」

長門と陸奥が言った。

長門たちは敵艦隊が沈んで行くのを見届けた後、母港へ帰って行った。

 

    ― その日の夜 ―

「イタタ・・ちょっと被弾しすぎたわね、修復材って結構しみるのよね・・・」

矢矧は入渠ドックで傷口に修復材を塗りながら言った。

「・・よし!これで大丈夫ね、さてお風呂に行きますか、あぁ今日は疲れたぁ」

そう言いながら背伸びして矢矧は浴場へ向かった。

「ちょっと、阿賀野さん止めてよ~」

「別にいいじゃない~」

阿賀野が五月雨にお湯をかけて遊んでいた。

「陸奥、今日はお疲れ様」

「ああ、お疲れ様、あとで祝勝会やるらしいな」

「そうらしいな、既に隼鷹と那智が呑んでそうだな」

「ふふ、だろうな」

長門と陸奥が話していると矢矧が入ってきた。

「皆さん、お疲れ様」

「お疲れ様、私たちは先に上がるわね」

長門たちが風呂から上がって行った。

「矢矧、お疲れ様」

「阿賀野姉も、お疲れ様」

「この後祝勝会よ?後で提督連れて来てよ?なかなかそういうの来ない人だから」

「うん、わかってるわ」

「で?どうなの?提督とは?」

「どうって・・何もないわよ?」

「提督の事、好きなんでしょ?知ってるわよ?」

「○△□@!?」

矢矧は目を白黒させて、声にならない声をあげた。

「ふふ、みんな知ってるわよ?」

「なんで!?」

「の姉ですもの、そのぐらいわかるわよ」

「う、うん、私が支えてあげないと無茶しそうな気がして・・」

矢矧は恥ずかしそうに言った。

「確かに、私が来てからでも、提督は今までいろいろな無茶をして来たけど、矢矧が着任して、秘書艦代わった時からあまり無茶をしなくなったわ、は私より頭脳明晰っていうのもあるけど」

「そんな事ないわよ」

「私の事はいいから、自分の幸せを考える時期じゃないかしら?しっかりとね矢矧、じゃあ、お先に」

と言い残し阿賀野は風呂から上がった。

「自分の幸せ、かぁ・・私みたいなのでいいのかしら?っとこれ以上お風呂に入っていたらのぼせちゃうわ」

慌てて浴場から出ていく矢矧であった。

 

―食堂―

「かんぱーい!!」

艦娘たちが食堂で祝勝会を開いていた。

「ひゃはー!勝利の後の祝い酒は最高だな!那智」

「ああ、私は何もしていないがな」

酒豪コンビがこれでもかと酒を飲みだした。

「鳳翔さんの作った料理のです」

電が鳳翔に言った。

「電ちゃん、ありがとう、まだまだあるから沢山食べてね」

「ありがとう、なのです」

「あれ?提督は?まだ?」

鬼怒が言った。

「矢矧が迎えに行きましたよ?」

阿賀野が言った。

「それにしても遅いなあ、睦月たちちょっと見て来てくれ」

「じゃあ、行ってきま~す」

睦月たちが提督たちを迎えに行った。

その頃、執務室では矢矧と提督が居た。

「提督、お疲れ様です」

「矢矧、今日は大変ご苦労だった。」

「ところで、これですが」

「そうか・・やはり401だったか」

提督がため息をつきながら言った。

「後悔・・してますか?」

「まぁ・・な」

「提督、それは?」

「ケッコン指輪だ、本来ならば俺が買う役目だが、何故か401が持っていた、唯一の形見だな」

提督はそう言いながら苦笑した。

「凄い綺麗・・・」

「もう、いいか?」

「提督、これ、いただけませんか?」

「!?お、おい、意味を分かって言っているのか!?」

「401さんの果たせなかった事、私が果たしていいですか?この指輪と一緒に提督の傍にいていいですか?」

「え!?」

提督は矢矧の言葉にあっけにとられていた。

「提督、貴方は無茶をしすぎます、恐らく今までの事があったからなのでしょう、それでは貴方の心と体

が持ちません、これからずっと提督のそばで401さんの分まで頑張りますので」

「あ・・いや・・矢矧にそこまで言われるとは・・・何か矢矧にプロポーズされた気分っていうのか、プ

ロポーズされたのか」

「え!?やだ、私ったら」

提督も矢矧も顔が赤くなった。

「こんな俺でよかったら・・・よろしく頼む」

「こ、こちらこそ、お願いします」

そう言いながら、二人は口づけを交わした。

「なんか、恥ずかしいな」

「そうですね」

そう言いながら、お互いの指に指輪をつけようとした時、扉が開いた。

「提督~、祝勝会やってますよ、って、何ですか?何ですか?」

睦月が部屋に入ってきて、興味津々な目で二人を見た。

「キャッ!!」

「うわっ!!」

それに驚き二人は声を上げた。

「おお、提督もやるねぇ」

「弥生、見ました、やはりそうでしたか」

「もぅ、司令官も好きですねぇ」

望月きたちが睦月の後ろから顔を出して言った。

「あ、あの・・だな」

「あ・・え~と・・」

「いよいよケッコンですか、みんな~、輸送任務開始です!」

「は~い」

睦月たちは提督たちを囲み、祝勝会をやっている食堂へ連れて行き、そのまま祝勝会がケッコン報告に

代わり、艦娘たちに祝福され、後日、盛大な結婚式が行われた。


 
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