「いたっ!」
剣丞たちは、一騎の騎馬を視認した。
湖衣の金神千里で事前に見つけていた、兎々と光璃だ。
供の者すらおらず、光璃を背負った兎々が一騎だけということから、事の重大さが窺える。
「兎々ーー!!」
「薫さま!湖衣!?」
兎々に要らぬ警戒を与えぬため、薫と湖衣を先頭にして合流する。
兎々たちを乗せた馬は、止まるや否や崩れるようにへたり込み、二人は湖衣に支えられてようやく下馬できた。
「ちょっと…光璃は大丈夫なんでしょうね!?」
兎々の背中でぐったりと動かない光璃を見て、美空が顔を青くする。
「…うん、大丈夫。気を失ってるだけみたい」
薫が光璃を兎々の背中から降ろしながら、状態を確認する。
薫は光璃を、湖衣は兎々を膝枕する形で地面に横たえた。
「兎々、話せるか?」
湖衣に膝枕されながらも、なお息の荒い兎々に剣丞は話しかける。
休ませてあげたいが、今は少しでも情報が欲しい。
「新田…剣丞…?なんれ、ここに……」
「みんなを助けに来たんだ。他のみんなは?」
「う…うぅ……」
剣丞のその問いを切っ掛けにして、兎々の瞳に涙が溢れる。
「まさか……」
「嘘……っすよね?」
悟った秋子と柘榴が絶句する。
何度も矛を合わせた好敵手として、信じられないようだ。
「敵は…どれくらいだったの?」
松葉が聞く。
長尾八千と互角の戦いをする武田軍だ。
相手も相当な大軍だったはず。
「…と……なのら…」
「え?ごめん兎々。よく聞こえなかった」
「……一人、なのら」
「…………え?」
「たった一人に……みんな……ぅうっ…」
そんなバカな…
誰もがそんな言葉を口に出そうとした、その刹那――
「星!思春!」
「「応っ!!」」
兎々たちを中心とした輪を遠巻きに見ていた鈴々たちは、兎々が来た方へと一斉に駆け出した。
「え、なに!?どうしたの?」
剣丞はそのただならぬ様子に動揺する。
「誰かが近付いてきてるの。ものすごく怖い氣を放ってる人が…」
「多分、武田を一人で
そう言うと鞠は剣丞の側に、小夜叉は輪を出て鈴々たちの後を追った。
「剣丞さま、敵の狙いは光璃さまです。ひとまず光璃さまと兎々ちゃんを後方へ下げましょう」
「あ…あぁ、そうだね。それじゃあ…美空、秋子さん、松葉、雫、蓮華姉ちゃん、薫ちゃんは光璃と兎々を連れて後方の輜重隊と合流。急いで躑躅ヶ﨑館へ戻ってくれ」
「ちょっと剣丞!私は前線に残るわよ!」
美空が反論する。
「気持ちは分かるけど、光璃たちを守る戦力も必要だ。光璃の側に居てやってくれ」
「う…わ、分かったわよ!その代わり、ちゃんと無事戻ってきなさいよ!」
「大丈夫なの!剣丞は、鞠が絶対護るの!」
「そっすよ御大将!大船に乗った気でいるっすー!」
鞠と柘榴が、非常に対照的な胸をドンと叩く。
「穏、みんなを頼んだわよ」
「はいぃ~~…分かりましたぁ~~……」
蓮華から頼まれているが、穏は行くのが嫌そうだ。
「それじゃあ、小夜叉の後を追おう。みんななら大丈夫だとは思うけど…」
鈴々に星、思春、それに小夜叉の四人が向かったのだ。
敵は一人。
常識で考えたら、勝てる者などいないだろう。
だが…
「念には念を入れましょう」
「そうだね」
戦国最強武田軍を一人で破った強者だ。
警戒し過ぎて過ぎることはない。
一抹の不安を抱えながら、剣丞たちは四人の後を追った。
――――――
――――
――
「最悪、だな…」
「ちっ…!」
星の呟きに思春は舌打ちで応えた。
接敵した鈴々、星、思春、そして小夜叉の四人は一定の距離を保ちつつ、一人の人物を半円状に包囲している。
だが、その人物が一歩進めば同じだけ下がり…を繰り返していた。
「なんでなのだ?どうしてなのだ!?なんで鈴々たちが戦わなきゃいけないのだ!??」
鈴々は先ほどからずっと呼びかけているが、相手からの反応は一切ない。
その虚ろな表情は、まるで鈴々の声など届いていないかのようだ。
「おい……コイツ、テメェらの仲間なんだろ?このデタラメな強さは一体どういうわけだ、あぁん?」
口強を叩いている小夜叉だが、数度相手を殺すつもりで突っ込み、悉く返り討ちにあっていた。
「ふんっ…我々の名ですら残ったくらいだ。貴様のような無教養な人間でも、奴のことを知らんはずがあるまい」
「んだとゴラァ!?」
「はっはっは、煽るな思春。だがお主の言う通り、我々より後世の人間で武を志したものであれば、この名を耳にした事もあろう」
「――っ!?おいおい、まさか…!?」
「答えてほしいのだ、恋!!」
真名を恋とする、この者の名は…
姓は呂、名を布、字を奉先という。
天下無双の飛将・呂奉先である。
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どうも、DTKです。
こんにちは、お久しぶり、初めまして。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、109本目です。
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