No.1193016

真・恋姫†無双 三人の御使い英雄伝

真・恋姫†無双の二次創作作品になります。お手柔らかにお願いします。

2026-09-09 04:34:19 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:139   閲覧ユーザー数:127

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 

※この作品は北郷一刀が主人公ではありません。オリジナルキャラ3名による二次創作作品になります。また、北郷の出番は遥か後な上に少ししか登場しません。

 

※真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~をプレイされている前提で進めています。ご容赦下さい。

 

以下のことを踏まえ、心広く読まれることをお願いいたします。

 

もう、ここまでみたいだ、な…

 

「いってしまうのね、一刀…」

 

俺の愛しい人が泣いている

 

「あぁ、もういかなきゃな…ごめん」

 

俺の役目はここで終わる、歴史の本流に逆らい、俺はこのまま消えていくのだろうか…でも、後悔はしないよ。したら、皆に悪いから。これで、いいんだ…

 

「さようなら、誇り高き王……愛していたよ、華琳……」

 

後は、華琳が何とかしてくれる……俺の役目は、ここまでだ…

 

『ダメッ!!』

 

「っ!?」

 

意識も朦朧としていた中で、突然誰かの叫び声が聞こえる。誰だ…?この感触は、誰かが俺を抱きしめている…?まるで俺が消えないように強く強く…

 

「諦めないでっ!!このままじゃ貴方が本当に『消えて』しまうっ!!」

 

消える…ただここからいなくなるだけじゃ、ない、のか…?

 

「くうううっ…!!ダメっ、私だけじゃ北郷さんを保てない…っ…!!」

 

背中から抱きしめられてるので表情は分からない。だけど、声だけでもかなり苦しそうだ。

 

「一刀さんも華琳さんも強く願って!!『華琳さんと共に歩みたい』と!!『一刀さんと一緒にいたい』と!!」

 

「!!」「!!」

 

俺は、このまま消えていいのか…?後悔しないのか、華琳と離れ離れになって…

 

「お願いっ!!私を信じてっ!!二人の本当の想いを、この『外史』にぶつけてえっ!!」

 

あぁそうだ…何で、こんな簡単なことに気づかなかったんだろう。俺は…俺は本当は…

 

『俺は、華琳と、華琳達と…この魏の皆と一緒にいたい!!たとえそれが歴史の本流に逆らおうともっ!!』

 

『私は、一刀と、一刀を想う皆と、この国で共に在りたい!!その選択がたとえ、どんな困難な事になろうとも!!』

 

俺と向き合った華琳から『俺と一緒にいたい』と、初めて本心を聞けた。ここで華琳の気持ちに応えないと、絶対に後悔する…

 

ここで応えないと、男じゃない…!!

 

「俺は!!」

 

「私は!!」

 

 

「「君が(貴方が)、好きだから!!愛しているから!!」」

 

 

俺の身体から、光が輝いていく。もう一つの温もりが俺を包んだ

 

「一刀を私からとらないで!!一刀は、私のものよ!!」

 

「俺を華琳から離さないでくれ!!俺は、華琳と一緒にいたいんだ!!俺達の邪魔を、するなあっ!!」

 

さらに光は激しく輝き、あまりの眩しさに俺は目をつぶる。刹那、光は収束していき、俺の身体の中に消えていった…みたいだ。

 

慌てて俺は身体を動かす…よかった、五体は満足に動かせるみたいだ。それに、目の前に華琳がいる。

俺は、追い出されなかった…のか…?

 

どっと疲労感が出てきた。体中から汗も吹き出している。今さら呼吸をしていなかったことに気づき、肺に空気を送り込む

 

「はぁっ、はぁっ、はぁ…」

 

「一刀っ、無事っ!?」

 

「だ、大丈夫…なんとか…」

 

華琳が俺を支えるのと同時に、俺の背中から抱きしめていた腕の力が抜けていく

 

「か、一刀さん…よかっ、た…」

 

ドサッ…慌てて振り向くと、白い装束に身を包んだその少女は、そのまま意識を失ったらしく、その場に倒れ込んだ

 

「ちょ、ちょっとキミ、しっかり!!」

 

慌てて俺はその子を介抱する…良かった、頭は打ってないみたいだ。華琳も心配そうに見ている。

 

「おそらく一刀を助けるために、己の力を使い切ったのでしょう…貴方、この子と面識は」

 

「知らない、だけど……装束の中の服装とかを見ると…俺と同じ場所の人かもしれない」

 

「天の国から……連れていきましょう。一刀や私の真名を知っているし、今回のことも、何か事情を知っているかもしれないわ」

 

息を整えた俺は、この少女を抱えて成都城に帰還した。俺としては戻ってくることはないと思っていたんだけど

 

霞達からは「また新しい女連れてきよってー…」などとからかい半分に言われたものの、もう慣れっこだ。

それに…またこうやって軽口が聞けることが、これほど嬉しいことだったのかとも実感する

 

 彼女は劉備さんの好意で一室借り、そこで寝てもらうことになった。看病も季衣と流琉がついている。多分、精神的な力の限界を迎えたものだろうから、明日には意識が戻ると思うけど…

 

 今回の事態が落ち着いて、改めて華琳と二人きりになる。今度は人目のつかない雑木林ではなく、成都城の空中回廊で

 

しばらくは俺も華琳も黙って月を眺めていた。そして、先に俺が華琳に話し始める

 

「…華琳」

 

「…なに?」

 

「ありがとうな。華琳の初めての本心。聞かせてくれて」

 

「…ふん」

 

華琳にしては珍しく赤くなっているな…今の俺も赤くなってるんだろうけど

 

「後悔してないよ、俺。華琳に素直な気持ちが言えたこと」

 

「それは私もよ…人知を超えた力には逆らえない…そう、諦めていたわ…けれど」

 

「けれど?」

 

「今は、後悔していないわ。やっぱり諦めきれないもの…貴方を」

 

華琳にここまで言われるなんて、俺は幸せものだな…

 

「華琳…前言を撤回させて欲しい」

 

「何?」

 

「愛していたじゃなくて…愛しているよ、華琳」

 

「…バカ」

 

月の光と影に覆われながら、一刀と華琳は口づけを交わした。もう二度と、離さないと決意を新たにして。

 

 

 翌日、一刀達は彼女の意識が目覚めるのを待った。季衣と流琉が交替しながら看病を続けていると、彼女は意識を覚ました。

 

「…ん?あ、れ…ここは…」

 

少女の意識が戻り、季衣と流琉が駆け寄る。

 

「あ、姉ちゃん起きた!!」

 

「仲康…さん…?」

 

「あ、兄様の言った通り、わたし達のことは知っているみたいですね!」

 

「典韋さん…」

 

「ボク、華琳様と兄ちゃんに知らせてくるよ!!」

 

「季衣、お願いね」

 

季衣は部屋から慌ただしく出ていき、王の間で魏の将達が揃っている一刀達に目を覚ましたと報告した。華琳は可能なら、すぐに王の間に連れてくるようにと季衣に頼む。

 

「姉ちゃん、動ける?」

 

「ありがとう、大丈夫ですよ。さぁ、参りましょう」

 

季衣と流琉は心配なので、彼女に付き添うように王の前と案内していく、一方、一刀達はあの少女がどのような対応をするのか思案していた。

 

「…あの子は味方なのかな…悪意が感じられるようには見えなかったけど」

 

「油断は禁物よ一刀。まずは事情を聞くところからね」

 

華琳は、彼女から油断しないようにと各将に伝える。

 

「兄ちゃーん、連れてきたよー!!」

 

季衣と流琉が付き添いながら、白装束を来た少女が案内されてやって来た。白装束の少女は、華琳達に大陸の最敬礼をする。

 

(この大陸の作法は知ってるのか…)

 

一刀は大陸の知識があることを確信しつつ、なるべく緊張させないよう少女に優しく尋ねた。

 

「大丈夫だったかい?びっくりしたよ…あの後、意識を失うだなんて」

 

「ごめんなさい…すぐに事情を話そうとしたのですが、抵抗が想像以上にあって、私の精神が焼き切れちゃったみたいです。一刀さんの流れも調整してましたし…あはは、修行不足ですね」

 

バツが悪そうに笑いながら、昨日のことを思い出して少女は神妙な面持ちで謝罪した。

 

「それと…申し訳ありません。状況が状況とは言え、孟徳さんの真名を発言してしまいました。非礼をお詫びいたします」

 

「…構わないわ。私の真名を知っているということは、貴方は私達のことも、一刀のことも知っているようね。一体何者なのかしら?」

 

「はい、お答えします」

 

 

咳払い一つして、彼女は改めて、自己紹介を始めた。

 

「私の名前は名西(みょうざい)さくら。北郷さんと同じ、日本の生まれです」

 

「何と!?」

 

「北郷と同じ天の国ですって!?」

 

「やっぱり…」

 

一刀は共通するものがあるので合点がいったが、魏の将達は一刀と同じ天の御遣い出身ということで、強い関心を示している。続けてさくらは話す。

 

「と言っても、北郷さんとの時代ではなく、その数十年先の未来の人間です。北郷さんの血を引いた方々が数人、私達『管理者』として一緒に行動を共にしていたりしていますよ」

 

「え!?」

 

「ほ、北郷の子供だと!?」

 

「それって、私達の誰かの子供かなぁ」

 

「!?!?!?」

 

一刀の血を引いたものがさくらと行動を共にしている…この事実に色めき立つもの、動揺するものと反応は様々見られる。

 

一刀は自分の血を引いた末裔に皆が先に関心に行ったのを苦笑しつつ、華琳を見ると少し頬が赤かった。さすがの覇王もそこには関心を示したらしい。一刀の視線に気づいたのか、コホンと咳払いし、華琳が落ち着きを取り戻す。

 

「管理者…初めて聞く言葉ね…一刀は?」

 

「俺も初めてだよ…あの、名西(みょうざい)さん?」

 

「さくらで結構ですよ、北郷さん」

 

「あぁ、じゃあ…さくらさん、その『管理者』というのは一体何者なんです?」

 

「はい、それを説明する前に…北郷さんの今、身に起こっている非常事態から伝えなければいけません」

 

「非常事態…?」

 

さくらは一刀の顔を見つめて、真剣な面持ちで静かに今の一刀の立場を伝えた。

 

「はい…北郷さんはここまでに、幾度も『外史』の理である歴史の本流に逆らった結果『外史』から追い出され、北郷さんのいる日本に戻されるはずでした」

 

「はずだった…?」

 

「ところが、北郷さんが役割を終えた時、この『外史』は追い出すどころか、北郷さんの存在そのものを『抹消』しようと動いたのです」

 

「何だって!?」

 

「何ですって!?」

 

一刀と華琳は衝撃を受ける。もし二人の想いを言葉として叫んでいなかったとしたら、北郷一刀という存在が消されていたというのだから。そして、華琳は聡い少女ゆえに、その意味を瞬時に理解してしまう。それはつまり…

 

ーーー北郷一刀がこの世にいなくなり、永遠に会えなくなるということーーー

 

「…ッ!!…か、は…ッ…!!」

 

「か、華琳様ッ!?一体どうし…すごい汗!?」

 

華琳は激しく動揺し、震えが止まらなくなる。動悸がおさまらず、上手く呼吸ができない。玉座から落ちて立つことすら困難になり、その場に這いつくばる姿勢になる。これほどまでに動揺した華琳の姿を見たことはなく、魏の将達も一同に驚いている。

 

「華琳っ!!」

 

たまらず一刀は玉座に近づき、華琳の手を握る。 

 

「華琳!!俺は大丈夫だ、ここにいる!!あの時言ったじゃないか!!お前とずっと、一緒にいるって!!」

 

「かず、と…?」

 

「落ち着け、俺はここにいるぞっ!!見失うなっ、自分を!!」

 

一刀が手を握ったことにより、華琳は改めて、一刀が今ここにいることを実感し、我を取り戻した。華琳は幾度かの深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

「え、えぇ…ありがとう、一刀」

 

「あぁ、これくらいお安い御用さ」

 

「…皆、ごめん。昨日の事で謝らなければいけないことがある…」

 

華琳を何とか落ち着かせた一刀は、王に代わって改めて、皆に昨日あった一連の出来事を説明する。

 

自分が歴史の本流に逆らい、この外史から消えそうになったこと。すんでの所でさくらに助けてもらい、ここに存在ができるようになったこと。そして、華琳への気持ちをこの外史にぶつけたこと…事の真相を話すと皆、三者三様の反応が帰ってきた。特に怒ったのは霞である。

 

「一刀!!何でそんな大事なこと隠してたんや!!ウチらのこと信用できへんかったんか!!」

 

「言えるわけ無いだろそんなこと!!下手すれば皆を巻き込んでしまう!!戦が終わって、やっとこれから皆と手を取り合って行こうっていう中で、俺が皆の前で消えるだなんてこと…」

 

怒りの気持ちも一刀は理解するが、一刀はまず霞を落ち着かせることを優先し、彼女を諭した。

 

「それに、存在が抹消されると分かったのは今さっきで、あくまでその怒りは結果論だろ」

 

「消えていくこと自体は変わらへんやないか!!」

 

「必ず帰ってくると心では誓ってたさ!!そうでないと俺だってこの現実を受け入れられる訳がなかった。だけど結局…自分はここに残る選択をした。後悔したく、なかったから…」

 

「うぅ、ずるいわ一刀…そんな顔されたら、強く言えんやん」

 

霞は一刀の辛そうな顔を見て、苦渋の選択であったことを理解し、強く出れなくなる。彼女もまた、一刀を心の底から愛しているのだ。天の世界に帰っても必ず帰ってくる。最終的に自分たちのために残ってくれる選択をしてくれたことには純粋に嬉しかったのだ。

 

さくらはこの場で理解出来てない魏の将達に説明しようとした、が…

 

「えぇ、皆さんが動揺するのも当然ですよね…二人の強き想いがなければ、今ここに、北郷さんの存在そのものがなくなり、二度と皆さんと会えなくなっていたのですから…」

 

「さくらさん!!それは言っては…!!」

 

「あっ…!!」

 

説明をしようとしただけだった。しかし、自分が今とんでもない事を言ってしまったと慌てて両手を抑える。だが遅かった。

 

今の言葉を聞いて、魏の将達は改めて「北郷一刀が存在しなかった」という意味をこの場の全員が理解してしまった。狼狽と動揺が広がっていく。特に酷かったのは二人だ。

 

凪がその言葉を理解した時、パニックを起こした。

 

「うあああああ!!そんなの嫌だあああああ!!」

 

「ちょ、凪落ち着け!!」

 

「たいちょーはここにいるの!!」

 

慌てて真桜と沙和が暴れる凪を必死に押さえつける。 

 

「ちぃちゃん、しっかりして!」

 

「ちぃ姉さん!」

 

「う、うん、大丈夫だから…」

 

張三姉妹の次女、地和がショックのあまり卒倒しそうになり、天和と人和が慌てて支える。

 

一刀は慌てて凪と地和のところへ駆け寄り、華琳の時と同じように手を握り「俺はここにいる、決して離れたりはしない」と決意のこもった言葉を二人に聞かせる。

 

「隊長…」

 

「一刀…」

 

一刀は何とか、二人を落ち着かせることに成功した。

 

この事態を見て、昨日それまで思っていた「自分が天命を全うして消えて、あとは皆を信じる」と考えていた判断が甘かったことに、一刀は心の中で激しく後悔した。

 

華琳ですらあれほど動揺しているのに、自分が消えたら皆が動揺するはずがない。事実、消えてない今ですら、凪と地和の2人がパニックを起こしている。本当に自分がいなくなったら、パニックの規模はこんなものでは済まないだろう。強く強く「いつまでも、皆とここにいる」と一刀は決意を固めた。 

 

「『外史が北郷一刀を消滅させようとしている』…私がそれに気づいたのは、既に北郷さんの消滅が始まってて…あのように、私が強引に介入して、存在を維持するしか方法がなかったのです」

 

さくらが本当に申し訳ない顔をして華琳と一刀を見る。さくらはここで責められてることも覚悟していた。

 

「そっか、ありがとうさくらさん。あなたがいなければ、俺はここにいなかった」

 

「えぇ、私からもお礼をいうわ。ありがとう…私の大切な人を守ってくれて」

 

「二人とも…ありがとうございます…」

 

だが二人からは感謝の意を示され、うっすらと涙を浮かべている。さくらはさらに説明を加えていく。

 

「この『外史』では、想いの強さは、そのまま強さになります。だからお二人の「好き」である強い想いが、『外史の意思』以上に強くなった。結果として、北郷さんを繋ぎ止めることができたのです」

 

「さくらさんは俺達の想いで、俺を繋ぎ止めてくれたのか」

 

「私はきっかけに過ぎません…それに、北郷さんがいなくなれば、『外史』の均衡が崩れてしまう。あなたという存在は、あなたが考えている以上に大きいのですよ?」

 

「俺の、存在…?」

 

 一刀は自身の存在がどのようなものかを考えたが、あくまでそれはこの大陸だけ。その外から見た時に『北郷一刀』がどう見られているのか、想像もつかない。

 

「ただ、私が北郷さんの存在を維持したことで、動き出す勢力がいます。私達『管理者』の強硬派です」

 

「ここで管理者が出てくるのか…何者なのだ、そいつらは?」

 

 秋蘭が尋ね、引き続きさくらが答える。

 

「『管理者』とはこの『外史』を見守る立場…無事に歴史を終え、終端を迎えた『外史』を閉じるのが私達の役目です。ですが、強硬派の人達は『外史』に介入してまで、強制的に歴史の終わりを、終端を起こす人達です。この大陸で言えば、五胡のような存在です」

 

「外部からの侵入者か…厄介だな」

 

「はい」

 

「本来なら歴史の終端を迎え、この『外史』は閉じられるはずでした。ですが…」

 

「さくらさんが俺を救ったことで異常が発生し、強硬派の管理者達が、無理やりこの世界を滅ぼしに来ると?」

 

さくらが苦虫を噛み潰した表情で首肯する。

 

「ふむ…」

 

「君が責任を追う必要なんてないよ。選択肢はなかったんだし、結果的にこうして、俺はここにいるしね」

 

一刀は、自分がその凶行を止めることができなかったことに責任を感じていたさくらに優しく感謝をする。さくらも少し表情を和らげてくれて、安堵する。

 

「さくら殿、幾つか聞きたいのだがよろしいか?」

 

「はい」

 

質問を続けたのは禀である。メガネの位置を調整しつつ、表情を変えずにさくらに尋ねる。

 

「『外史』という言葉の言い回し…貴殿の使い方を聞くと、この大陸が1つではないように聞こえるのだが…他にも同じ大陸があるということか?」

 

「はい、あります。北郷さんには並行世界の定義と想像してもらえればいいかと」

 

「並行世界、か…」

 

「我々にも分かる言葉で、説明が出来ますか?」

 

「はい。この『外史』は、北郷さんを達を含めた、数多ある思いの数だけ存在します。つまり、それだけの数の皆さんと同じ存在が『外史』として存在しているのです。奉孝さんが考えられている通り、大陸と『外史』は一緒と思っても構いません」

 

「なるほどー…ということは、多くの人の思い、それが個であれ集合であれ、そこから『外史』という全体が作られー、その中に大陸と、風達がいるのですねー」

 

一刀はあれだけの説明で即座に理解できる風の頭脳に改めて舌を巻いた。さっぱり理解していない春蘭や凪達とは対照的だ。さらに風は尋ねていく。

 

「それだけの外史を管理するには仕事量が多くなりすねー…となると、今いる管理者の皆さんでは仕事がまかなえていないんじゃないですかー?」

 

「はい、恥ずかしながら…その負担を減らそうとして、『外史』に介入して大陸を滅ぼし、強制的に終端を迎えさせているのが、強硬派なのです」

 

「自分たちで仕事が多くなって対処できんから、介入して仕事を減らすとか、強引やな…」

 

霞は、外史の意味は分からずとも、自分たちで仕事がさばけないから、途中で強引にさばいて仕事を減らそうということは分かるらしい。一刀は変な所で感心する。

 

「我々の運命を強引に終わらせるとか…こちらの命を何だと思っているんだ!」

 

「残念ながら、強硬派の人達は『外史』に住む人間は傀儡として、人として扱っていません…これも、思想が歪んでしまったからでしょう」

 

「ひどいわね…」

 

「管理者全員が、そのような考えを?」

 

「いいえ、私達も介入することはありますが…介入は必要最低限ですまし、終端は迎えることは『外史』の人間に委ねています。強硬派は管理者の一派に過ぎません」

 

「なるほど…」

 

稟や風、桂花はこれまでの情報を整理し、共有し始めた。おそらくは華琳に改めて説明するためだろうな、と一刀は推測する。

 

「ちょっといいか?」

 

「はい、元譲さん。なんなりと」

 

 意外にも、ここで春蘭がさくらに質問する。 

 

「その強硬派とやらは…強いのか?」

 

 純粋に管理者の実力を測りたいようだ。第一線で動いてきた彼女にとっては興味のある話題だろう。

 

「一部では呂奉先さんのように、強大な力を有している方もいますが…元譲さんや妙才さんなら、ほとんどの管理者を討ち取れるでしょう。私も夏侯姉妹のお二方には勝てません。ただ…」

 

「ただ?」

 

「先ほどもいった通り、私も北郷さんと同じ1800年先の人間。それだけ集合知の差に乖離があります」

 

「科学技術や、こちらに存在する呪術なんかの、すべての分野で俺達は負けているということか。厄介だな…」

 

 さくらは一刀と同じ日本の人間であると言った。当然、この大陸では知らない技術や知識を知っていることだろう。しかも一刀以上に。管理者という存在が敵対した時はかなり厄介な存在になるな、と一刀はひとりごちる。

 

さらに、桂花がさくらに疑問をぶつける。

 

「なら、北郷をを狙う理由って一体何なの?」

 

「北郷さんが全ての『外史』においての根幹となる方だからです…例外もありますが、北郷さんがいなければ、『外史』そのものが存在しなくなります」

 

「思いがあっても、基軸となる人物がいないとダメってことね」

 

「はい」

 

「それに『外史』がなくなれば、管理者たちの仕事の負担が減る。まして北郷は武の実力はない。そいつらにとっては、北郷を殺すのはわけもないでしょうね」

 

桂花が怒りの目で北郷を見る『あんたがもっと強かったらこんな苦労しなくてすむのよ!!』とアイコンタクトを送っている。一刀は苦笑しながら「ごめん」とこちらも送る。

 

「…手前勝手が過ぎるな」

 

春蘭が呆れながら答える。さくらもバツが悪そうに

 

「これに関しては弁解の余地はありません…申し訳ありません」

 

と答えるだけだった。一刀は確認のためにさくらに尋ねる。

 

「この『外史』を作るために必須要素は俺…だから、俺の存在意義が大きい、そういう事だね?」

 

「はい」

桂花たちはこれまでの説明を改めてまとめてみた。

 

一.『外史』とは数多ある思いの集合体であり、外史の中にこの大陸が存在する

二.北郷一刀という存在は、外史を存在させる理由であり、根幹であること

三.一部の『管理者』が北郷を狙う理由は、外史を管理する負担軽減のためという、自分勝手な理由であること

四.管理者には、平穏に見守る「穏健派」と、介入して滅ぼす「強硬派」が存在するということ。

五.強硬派の管理者は、外史の人間を人間として見ていないということ

六.管理者には、強い者も存在するが、基本的には大陸の将でも討ち取れる。

七.ただし、北郷と同じく天の知識があり、知識差は埋められないということ

改めてさくらの説明をまとめられたものを見て、一刀は自分の存在意義を改めて噛み締めていた。『外史』の世界のルールが、この大陸にとっては害悪でしかないな、と感じるとともに、自分がこの大陸におて迷惑をかけてしまっているんだな、と責任も感じた。

 

「お前が責任を感じることはない。悪いのはその管理者とやらだ」

 

「そうだぞ。私こそ、お前がいなければこの場に存在していなかったのだ…もっと自分を誇れ」

 

「…あぁ、ありがとう。春蘭、秋蘭」 

 

一刀の自責の機微を感じた夏侯姉妹が、それぞれの方に手を置かれる。二人の気遣いがとても嬉しく、そして頼もしく感じた。迷う必要なんてない、俺はこの世界で生きてやるんだ!何度でもそう思おう!と決意が増していた。

 

稟は最後に、とさくらに質問する。

 

「最後になりますが…これまでにこのような変異があったかどうかを聞きたい」

 

「…初めてです。強硬派が介入して北郷さんを直接殺害した、というケースもありましたが…第三の力を経由して、北郷さんの存在を『抹消』しようとしたのは初めてです…」

 

「…な、なぁさくらはん。もしなんやけど…その存在を『抹消』する技術が確立して、他の『外史』で使われると、どうなるん…?」

 

 おそるおそる真桜が聞く。さすがこの大陸で、唯一の科学技術に触れている人物だ。理論は理解できなくても、その技術が科学的に確立したらどうなるかを想像しているようだ。さくらは何度目かの神妙な面持ちで答える。

 

「これがもし技術として確立し、当たり前に使えるようになれば…『外史』のほとんどから北郷さんが消えます。仮に新たな『外史』が誕生しても、そこには北郷さんのいない、ただ同じ歴史を繰り返す『外史』しか残らなくなるでしょう」

 

「何だって!?つまり俺の知っている演義の歴史を、華琳達がなぞるだけだっていうのか!?」

 

「…はい」

 

「うわぁ…やっぱそういう事か…」

 

真桜は予想していた通りの答えだったのか、顔を歪めながら納得している。さくらはさらに苦い表情で説明を続ける。

 

「…北郷さんという軸がいなければ、多くの外史が存在するができなくなります。仮に存在しても、歴史の本流は定まっているため、私達『管理者』は直接手を下すこともなく、『外史』を閉じることが容易になるでしょう」

 

「なんてことだ…」

 

一刀がもし、自分が管理者の立場なら、と考える。

 

(数多ある『外史』のほとんどが演義通りになるというのなら、今以上に兵達が犠牲を出し、天和達は病気でいなくなり、稟も病で…流琉や秋蘭が討たれ、桂花は華琳と仲違いして賜死、沙和は後年に不遇な扱いを受ける。それを、永遠に見続ける…そんなの、俺は耐えられない…ッ…!)

 

「お兄さん」

 

「はっ!!」

 

「大丈夫ですよー、風達はここにいるのです」

 

風が優しく手を開かせる。無意識の内に拳に力を入れすぎたらしい、血が滲んでいる。一刀は表情で皆に感情を読まれているなと苦笑する。風に大丈夫だから、と頭を撫でていく。

 

「なぜこのような事が起こったのか、先ほど信頼している方に調査をお願いしました。程なく動かれると思いますが…ッ…!!」

 

「なっ、何だこいつらはっ!?」

 

どこから現れたのであろうか、突然、白装束を来た集団が現れ一刀達に襲いかかってくる。この場は朝議の形をとっているため、将達は獲物は持ってきていない。

 

華琳と軍師達・一刀・張三姉妹を中心に守備形態を展開する。

 

「華琳様っ!!」

 

「隊長に指一本触れさせはしないぞっ!!」

 

「お前らっ、どこから入ってきた!!」

 

「天和ちゃんはボクたちが守るんだ!!」

 

「でぇぇぇぇい!!」

 

 春蘭は気迫ある拳を叩きつけ、衝撃から複数の白装束達が吹き飛ぶ。倒れた白装束の中身を確認すると…何もいなかった。

 

「消えただと…?」

 

「感触として人間じゃない…人形だ!!」

 

「消えちゃった…ううう、ボクこういうの苦手…」

 

「とにかくこの木偶ども全部打ち倒すんや!数がおらんようになったら何とかなる!!」

 

(これが強硬派の管理者の攻撃、ということか…!)

 

魏の将達が次々に白装束の木偶を打倒し消していく、本体は消えるも、装束はそのまま残っている。動きにくいが、完全に動けなくなったわけではない。

 

霞が最後の集団を打ち倒す。

 

「よっしゃ、これで最後や!!」

 

気合のこもった正拳を放ち、木偶達は吹き飛び、その場から消える。残ったのはやはり装束だけで、本体が見当たらない。

 

「やれやれ、何とかなったか…」

 

「華琳様、無事でしたか!?」

 

「えぇ…さくらは?」

 

「そういえば…さくらさん!?どこだ!?」

 

 いつの間にか桜の姿が消えていた。装束の中に隠れているのだろうか、全員で装束をめくって必死に探していく。 

 

「隊長!!さくら殿がっ!!」

 

「見つけたか、凪…なっ…!?」

 

 凪が慌てて一刀を呼び駆けつけると、さくらの身体に、何箇所にも刀が突き刺さっていた。口からは血を吐いている。

 

「さくらさん、しっかり!!」

 

「…ぐっ…」

 

「まだ息がある!!急いで救護を!!」

 

一刀は凪達に治療の用意を指示し、担架を準備させ医療室に静かに運んでいく。

 

「くそっ、やられた!!…最初から狙いはさくらだったんや!!」

 

「我々の気を木偶達にそらせ、本命はさくらに刃を突き立てていたのか…!!」

 

容態を診た医者は「何とか命の危険は回避したアが、傷が深い上、毒が塗られており、意識が戻るには相応の時間がかかるだろう」との診断だった。華琳は顔を歪める。

 

「これで、外史につながる手がかりは、しばらくお預け、ってことね…」

 

「くそっ…とにかく、今は俺達のやれることをやろう」

 

「そうね…華佗をすぐ連れてくるように伝えておくわ」

 

「頼む、華琳。ここじゃ、華佗だけが頼りだ…」

 

白装束の集団は大量の木偶であり、魏の将達を意識させ、本命のさくらに刃を突き立てる。確実に殺せるように毒を盛って。暗殺するという手際の良さだった。

 

一刀達は管理者の襲撃に備えるために、これからどうするのかを三国で話し合うことになる。

 

 

 

…だが、動揺しているこの時に、管理者の襲撃は来ることはなかった。

 

この『外史』から連なる別の『外史』で、三人の御使いが降り立つことになる。管理者にとってその三人が脅威となるため、余力を割けなかったのである。

 

これは、一刀のいない『外史』で戦い抜いた、三人を中心とした物語である。

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択