No.1194194

BLEACH短編エピソード0「帰る場所」

BLEACHの二次創作です。
蓮が咲き行く道への番外編です。視点は主に、浦原喜助視点です。

2026-10-05 17:37:53 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:60   閲覧ユーザー数:60

BLEACH短編エピソード0「帰る場所」

 

 私は二回くらい死んだ。一回目は家族で、二回目は実験で。

 死んで、また生まれ変わって、また同じ記憶を持つ自分として生きている。

 なんの因果だろう。

 また愛情深いてて様とかか様のおかげで、私は大分、人を信じることができた。でも、人間は嫌い。

 それでも、同じ記憶を保持したまま私として生まれ変わるのは、何か強制的な力が働いているのだろうか。

 それがいいことなのかどうかは分からない。

 

 私の名前はツネナリ。父は浦原喜助で、私は浦原常成(ツネナリ)。母は浦原常沖(つねおき)。

 母に戦闘を仕込まれ、気まぐれに虚(ホロウ)を、いつも愛用している刀で瞬殺している。

 もう浦原喜助という天才型の研究者を知ってから、私は研究するのをやめた。

 やめて、オタクに邁進することにした。

 前世でも研究をしながら、電子書籍や漫画、ゲームやグッズを買い込んでいた。私の養子にした子は呆れていたけど。

 でも、その私の影響で、「暇潰し」と言いながら私の電子書籍や漫画を読んでいたし、ゲームもしていた。

 特にゲームは楽しかったらしく、わざわざ買い切りのゲームをダウンロードして遊んでいたくらいだ。そして、そのゲーム関連の資料を取り寄せて、暇潰しに絵を描いていた。

 暇潰しという割には、大量に描いていたが。

 前世の養子のことは置いておいて、私は神様の血筋を引いている。母は神様の血筋を引いていて、大神の総領神であるおんじの子孫らしい。

 私は、おんじの神社によく遊びに行く。友達は誰もいない。

 オタクだから大丈夫。かか様と話をするし、てて様とも話すし、テッサイは戦闘訓練の相手だ。いつかラスボスと戦うの? というくらい、戦闘訓練を施される。

 てて様も、たまに戦闘訓練の相手をしてくれる。でも、手加減されているので、いつか本気にさせたいと密かに思っている。

 このBLEACHの世界に生まれて、私は原作のことで悩むこともあるけど、幸せだ。生まれて良かったと、心の底から初めて思った。

 でも、気がかりはある。前世で私の養子だった一方通行(アクセラレータ)がどうなってしまったのか。それが気がかりで仕方ない。私は死んだ後、チームはどうなっただろうか。学園都市の闇にどっぷり浸かっていた私は、一方通行(アクセラレータ)を第一位にしてあげられたけど、精神はまだ子どもだった。特に、大事な彼女――私が生きていた時点では、友達以上恋人未満のような雰囲気だった――上条当麻が二重人格であることを気にしていた。カエル医師は楽観的だったけど、一方通行(アクセラレータ)は無理矢理引き剥がそうとする気がする。あの子は危うい。だから、私は最高傑作として、できる限りの愛情を注いだ。人間が嫌いな私なりに。それが彼にどう影響し、どう行動に出るのか分からない。

 そんな不安を抱えた私は、虚(ホロウ)が生きる世界を生きていく。

 

※

 

喜助視点。

 

 娘が可愛い。本当はずっと構いたくてたまらない。

 だけど、僕には治さないといけない死神達がいる。

 その研究に明け暮れている。

 そんな僕の様子を、妻の常沖(つねおき)は好きにさせてくれる。

 影に隠れて研究をしながら、表向きの商売の販路を広げ、浦原商店を継続させる。

 

 研究に籠ることもある僕のところへ、娘の常成(つねなり)は毎回顔を覗かせにくる。

 

「てて様ー! ご飯の時間だよー! その後、私と遊んでくれるんでしょー?」

 

 そう言って僕の手を引っ張り、団欒に加わらせる。

 

 今日も娘が可愛いと思いながら、ご飯をたくさん食べる常成に癒やされる。

 娘は僕の理想的な娘に育ちつつある。知能も高く、色んな能力もある。娘には将来への期待しかない。

 

 そんな娘を持てて、僕は誇らしかった。

 

 藍染に、臨月が近い妻を瀞霊廷で殺された。

 でも証拠がなく、ぶち殺したい衝動と絶望を胸に、一時期を生きた。

 

 殺す気でいたら、逆に藍染にまんまと嵌められ、夜一サンに助けられて下界へ出奔した。

 

 そして夜一サンは、ある神社を目指した。

 

 下界に降りると、会いたくてたまらなかった妻がいた。

 

 生きていたことが、まず受け入れられなくて思考が止まった。夜一サンに殴られて、ようやく現実だと認識した。

 

 その沖サンの腕には、僕と同じ髪色と瞳をした赤ん坊が抱かれていた。

 

 すやすやと眠っている。ふくふくとしていて、栄養満点に育ったと一目で分かるくらい、ふっくらとしていた。

 

 その赤ん坊が、死んだと思っていた沖サンと僕の子だった。

 

 涙が溢れて止まらなかった。

 

 僕は赤ん坊ごと、生きていた妻ごと抱きしめる。

 

 涙は止まらず、何度も嗚咽を漏らした。

 

 何年も積み重ねた恨み言も、気づけば沖サンにぶつけていた。

 

 でも、彼女はただ黙って聞いてくれた。

 

 そして、ただ一言。

 

「もう一人じゃないぞ、喜助」

 

 僕はやっと、瀞霊廷で独りだった絶望を振り払うことができた。

 

 今は家族とご飯を食べるために、団欒を囲んでいる。

 

 この幸せを、僕は壊したくない。

 

 自分は役割を演じなくてはならない。娘が二歳の時に話していた、原作の浦原喜助という役割を。

 

 でも今は、沖サンの夫であり、常成の父親でいる。

 

 たとえ原作が来ようとも、僕は僕だ。

 

 ※

 

 浦原喜助視点。

 

 浦原商店の店内は、意気消沈した雰囲気に包まれていた。

 

 娘が外へ出たまま、帰って来ない。

 

 突然、娘の常成(つねなり)が「おんじのところへ行く」と言い出し、喜助が慌てて止める間もなく外へ出かけてしまった。

 

 この頃の妻、常沖(つねおき)サンは寝ている時間が長い。黒崎一心と真咲に出会ったからだ。

 

 それから、世界の強制力によって、沖サンはゆっくりと時間をかけて存在消失しかかっている。

 

 そのせいもあり、喜助は店にはいるものの気が気ではなかった。娘まで二度と帰って来ないのではないかという考えが頭をよぎり、一日中心ここにあらずだった。店は鉄裁(テッサイ)に任せ、自分は他の仕事に追われていた。どうしても今後の展開に必要なことだからだ。

 

 その仕事に没頭していると、鉄裁が「常成サンから電話です」と呼びに来た。

 

 そういえば、携帯を持たせていなかったと思いながら、片隅で「居場所が分かる携帯を作ろう」と決意しつつ電話に出る。

 

 まだこの時代、携帯はガラケーだった。GPS機能が普及するのは、まだまだ先の話である。

 

「成サン、今どこにいるんスか?」

 

 喜助の開口一番は、それだった。

 

 だから常成が嫌な顔をしてしまうのも仕方ない。だが、心配なのだから仕方ない。

 

「おんじの神社にいる。そこから、あるコンビニ前の電話ボックスでかけてる」

「なんで外に出たんスか? 虚(ホロウ)がいて危ないのに」

「おんじの縄張り付近の結界が壊れたらしいの。あまりにも範囲が大きいから、私が至急呼ばれたの。でも、もう終わったから明日には帰る」

「分かったっス。でも、出かける時は詳しくボクに言ってから出かけてください。心配で探し回るところだったんスよ」

「てて様が探し回るのは洒落にならないからやめて。私、そこまで子供じゃないよ?」

「ボクから見たら、いつまでも子供っス。心配しない親はいない」

「世の中、意外と心配しない親っているものだよ、てて様」

「それは育児放棄って奴っスよ。それと一緒にしないで欲しいです」

「……そうね、てて様。じゃあ、明日には帰るから」

「無事が分かって良かったっス。じゃあ、明日帰って来てくださいね」

 

 通話が切れ、受話器を置く喜助。

 

 ほっとため息をつきながら仕事場へ戻り、作業を再開する。

 

 その手を動かしながら、色々と考えを巡らせた。

 

 何故、この時期に娘が狼の神様であるおんじに呼ばれたのか。

 

 結界なら、いつもは眷属である狼達に任せればいいはずなのに。

 

 いや、まさか……何やら動いている藍染が関係している?

 

 最近は物騒な事件も多い。虚(ホロウ)も活発化している。それに、この町を担当している死神も何やら言っていた気がする。

 

 ――人が消えている、と。

 

 結界を得意とする神であるおんじが手に負えない何か。

 

 得体の知れない、結界の亀裂……。

 

 それらが、喜助の中で少しずつ組み上がっていく。

 

 そして喜助は一つ息をつき、

 

「また、見ない振り案件スね」

 

 と一言呟いて、止めていた手を再び動かした。

 

※

 

 喜助視点。

 

 喜助は常成の部屋に来ている。

 

 妻は術使いだった為、この部屋には色んな術式が書き込まれている。だからこそ、娘の安全は守られている。常成もそれを理解しているからか、自分からこの部屋にいる。その為、喜助は安心して自分の役割を全うすることが出来るのだ。今は欲しい漫画のグッズを買いに外へ出ていない。

 

 さて、喜助は悩んでいた。

 

 妻が書いた日記。

 

 その日記を眺めることはしばしばあった。字は流暢で、どこか気品のある文字だ。喜助はそれをじっと眺める。

 

 書かれていることが断片的だからだ。

 

 いや、他の者に分からないよう、あえて断片的にしている。

 

『千年程度我慢し続けたりするどえらい根性の持主達が、自分の国を作る為に尸魂界へ集団で攻撃を仕掛ける』

 

 これだけで喜助は分かる。娘から直接聞いていたからだ。

 

 狼の神であるおんじは、自分の一族に日記をつけることを義務づけている。その為、常沖の日記はそれなりの量がある。読む方としては大変だ。断片的にしか書かないようにしているからである。

 

 娘の常成は閲覧自由だが、他人である喜助には閲覧制限がある。

 

 ちなみに、喜助に日記を書く義務はない。あくまで血筋が流れていない他人だからである。婿としての立場は優遇されるが、やはり他人には厳しい。

 

 だが、おんじは喜助を小さい頃から見ているため情があるらしく、その線引きは少し緩い。

 

 狼の神、おんじは始祖に近い存在らしく、一万年は生きているのではないか、と眷属達の間で囁かれている。

 

 そのおんじが、何かをしようとしていることは分かっている。

 

 おんじは、もうこの世界から存在そのものを撤退したいと思っているのだ。

 

 だから、何かと便利な器用貧乏――もとい天才である喜助を使いたいと思っていることが、あけすけに分かる。

 

 喜助としては、その考えの方が都合が良い。

 

 なぜなら、その方が色々と優遇してもらえるからだ。

 

 交渉した結果、代償付きではあるが、存在に傷はつかない代わりに、自分が持っていて当たり前だった霊力を失うという条件で、妻がいる世界を探す旅に出られるのだ。

 

 それだけで済むなら、まだ良いだろう。

 

 命まで取られてしまったら、もう何も出来ない。

 

 とにかく、情報は収集しなくてはならない。

 

 霊力が失われる前に。

 

 この世界からいなくなる前に。

 

 役割を全うする為に――。

 

 喜助はただ、己の望みの為に、やるべきことをやっていくのだ。


 
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