ディスカウントストアの売店にたこ焼きを買いにいくと、直前に並んでいた兄ちゃんが通話で列を離れた。
俺の後ろには誰もいない。売店のカウンターには既に何人かが緩い列を作っている。
おれはさっさとたこ焼き3パック分の食券を買って、広く前を開けて列についた。
後から食券を買った兄ちゃんは俺の前に並ぶが、やはり少しだけ間を開けている。
「どうぞ」
兄ちゃんが礼儀正しく促してくれる。金髪の髪を揃えてサッカーのユニフォームのような
軽装な黄色の服装をして、日焼けした兄ちゃんである。
「いや、いいですよ」
俺は遠慮して手を振った。先に券売機に並んでいたのは兄ちゃんだから
最初からそうするつもりだった。
「いいですか?あざす」
押し問答にもならず兄ちゃんが列を詰める。俺もすぐ後ろについた。
おばさんや色黒の外国人たちが新たに俺の後ろに並んでくる。
店員のおばちゃんがたこ焼きを一人であくせくと焼いているのを見て、列のおばちゃんが
「一人で大変よねえ」と話しかけてきた。上はパジャマのようなラフな服だが
赤い口紅と眼鏡にネックレスをした身なりのいいおばちゃんである。
俺が愛想笑いをしていると、たこ焼き屋のおばちゃんが慌ただしく外に出て
券売機を終了させる。ちょっと早いが今並んでいる分で店じまいの様だ。
「あら、よかったわね間にあって」
おばちゃんの素直な感想であった。
たこ焼きがパックに詰められて兄ちゃんに3個渡される。兄ちゃんの袖口から
チラリと青い洋物タトゥーが見えた。タトゥーを入れる様な不良(偏見)でも
礼儀正しい人が多いのだ。ワルなのか礼儀正しいのかどちらかにしなさいよとも少し思うが、
やはり全部ワルよりはマシだろう。
「ありがとうございました」
兄ちゃんはたこ焼きを持って帰って行った。
今度は俺が食券を渡す。
「あらっ、今2個分しかないからお待ちくださいね」
たこ焼きの残りは2パック分しかなかった。俺が頼んだのは3パック分だ。
はい、と軽く返事をして待つことにした。元より焼き立てが食いたかったので並んで待つのも
予定していたことだった。人が並んでいないと焼いてから時間が経ったたこ焼きが出てくるのだ。
さっきの兄ちゃんと順番が逆だったらだいぶ気まずいことになっていたなと安心する。
夕焼けから薄暮に変わって、頼りない電球の明かりで辺りが照らされていた。
まだたこ焼きを食いたい客が来ていたが、既に終売なのを知ると渋々とディスカウントストアの店内に入っていく。
アカイエカが顔の周りを飛んで鬱陶しい。さっき列のおばちゃんも手を顔の周りで振っていた。
たこ焼き屋のおばちゃんはさっさとたこ焼きを作っていく。
まずプレートに油を塗り、具の天かすのようなものをたこ焼き機に入れ。そこに生地を注入していく。
たこ焼き機は銅製だろうか、赤銅色に輝いている。
たこを置き、生地からブクブクと蒸気が出てきたら竹串でたこ焼きの周囲をマシンから剥がすようにして、
それを何回か行う。
最初はグズグズの液体だったものが脆い半固体になり、最後には丸いたこ焼きになっていた。
焼き立てのたこ焼きがパックに詰められて俺に渡される。
「はい、お待ちどうさま」
俺は会釈して受け取った。
まだおばちゃんと外国人が何人か並んでいて、並び客以外もダラダラとたむろしている。
ちょっとした下町風情の間を抜けてたこ焼きを車に持ち帰り、アツアツの状態で即食うことにした。
「あふ、あふ」
列ができていると確実に焼き立てが食えるが、提供を急いでいるので表面の焼きが緩いのがネックだ。
内部はトロッとしていて非常に熱い。俺は猫舌なのであふあふ息を吐きながら
なんとか食べる。やはりこのオーソドックスなたこ焼きは焼き立てが一番美味しいだろう。
1個食べて、俺はディスカウントストアに買い物に行った。
大量の買い物は非常に重い。
店から先に出て行った黄色いシャツのおじさんは背中が広く顎ががっしりしていて
いかにも格闘技経験がありそうなひとだった。
そんなおじさんもたこ焼きの券売機を見て、終売なのを知ってがっかりした様子で帰って行った。
オーソドックスでうまいのに100円というたこ焼きは、単なるコスパの良さ以上に
どことなく非日常的なワクワク感を我々に与えてくれるのである。
子供の頃に駄菓子を買いに行った感覚に近いのかもしれない。

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エッセイ。