No.1194527

とある少女のフコウ説。六話

とある魔術の禁書目録の二次創作です。
上条当麻女成り代わり主の体に空の境界の両儀織が同居してます。危険があると入れ替わります。

2026-10-13 05:29:43 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:22   閲覧ユーザー数:22

 

六話「御坂妹」

 

 姫神秋沙の件は――一応、解決した。

 

 私はいま、病院のベッドの上にいる。

 前回の入院は記憶喪失、今回は片腕の切断。しかも、自分では何も覚えていない。

『彼』と意識が入れ替わっている間の記憶は完全に空白で、気づけば腕がなかった。

 ……いや、本当に怖すぎる。

 

 でも、とにかく事件は片付いた。

 

「当麻、ほら」

 

 彼――一方通行(アクセラレータ)は、器用に皮を剥いた林檎をフォークで刺し、私の口元に差し出してきた。

 恥ずかしさはある。でも、なんだかんだで食べる私も私だ。

 

 丸ごと一個、最後のひとかけまで口に運ばれ、ようやく解放された私はつぶやく。

 

「もういい……一個で十分。インデックスにあげて」

「アイツは幼児体型だからな。どうせ丸かじりだろ。剥く意味ねェ」

 

 そう言って、彼はナイフをしまった。

 

 彼の名前は一方通行(アクセラレータ)。私の――友達、らしい。

 その距離感が普通なのかは、今の私にはわからない。

 でも過保護だということくらいは、記憶がなくても察せる。

「無茶すンなよ」と、軽く頭を小突いて去っていった。

 

 その後、インデックスがメロン味のポテチを買ってきて、「いっしょに食べよー」と差し出してきた。

 今回の騒動で共に戦ったステイル曰く、アウレオルスは自滅して整形までしたらしい。

 姫神はイギリス清教に一時預けられることになった。

 つまり、全部が「丸く収まった」というわけだ。

 

 私はまだ、この入院が明けたら補習が待っていることを知らなかった。

 

※

 

 八月二十日。午後六時十分。

 

 真夏の夕暮れ、補習を終えた上条当麻は、疲労困憊のまま帰路についていた。

 通常、夏休みの補習は初日に行われるものだ。彼のクラスも七月十九日から二十八日にかけて終えている。

 

 ……らしい。

 

 そう、「らしい」としか言えないのは、上条にその記憶がないからだ。

 七月二十八日以前の記憶がすっぽり抜け落ちている。

 つまり、上条からすると「知らないうちに補習をサボっていた」ことになる。

 

 担任の小萌先生は、彼女が入院していた事情を知っており、何とか補習のチャンスを残してくれた。

 感謝しつつも、上条は渇いた喉を潤そうと自販機へと向かった。

 

 千円札を投入する。

 ……戻ってこない。

 

 何度やっても、同じ。千円札は呑まれたまま無言を貫く。

 八つ当たりで蹴飛ばせば警報が鳴る――そういう未来が容易に想像できた。

 

 ここは学園都市。

 科学と理論の街でありながら、上条を見かけた人はこう思う。

 

「ああ、不幸って……本当にあるんだな」

 

 彼女は、そんな存在だった。

 

「ちょっと! 自販機の前でボーッとしてないで、どきなさいよ!」

 

 背後から声。

 続いて、ぐいっと腕を掴まれ、半ば強引に押しのけられた。

 

 振り返ると、中学生くらいの少女がいた。

 肩までの茶髪に整った顔立ち。白いブラウスにサマーセーター、灰色のプリーツスカート――常盤台中学の制服。

 

 上条は、すぐにピンときた。

 

《……織が言ってた、御坂美琴ってやつか。上条に勝負を挑んでくるとかなんとか……》

 

「ちぇいさーっ!」

 

 突然の叫びとともに、少女――御坂美琴は自販機にハイキックをかました。

 ズドン! という爆音のあと、自販機の中でガタガタと音がして、缶ジュースが一本取り出し口に転がった。

 

「ほらね。ボロっちいからバネが緩んでてさー、蹴ったら落ちてくるのよ。何が出るかは運次第だけど」

「……それ、毎日やってんの?」

「別にいいじゃん。実害ないでしょ?」

「実害っていうか、呑まれたんだよ、私の千円……」

「うわっ、マジで!? あははは! アンタ、ほんっと不幸だな~!」

 

 笑い転げながら、御坂は右手を硬貨の投入口にかざした。

 掌から電流のような火花が走り、自販機に放たれる。

 

 ――バチン!

 

※

 

「……重い……」

 

 ジュースが山ほど出てきたせいで、両手がふさがった上条はよたよたと歩いていた。

 すると、背後から声がかかった。

 

「必要なら手を貸しますが」

 

 驚いて振り返ると、そこにいたのは……御坂美琴?

 

「運びますよとミサカは手を差し出します」

 

 いや、違う。

 この口調、そして軍用のようなゴーグル。これは、妹の方だ。

 

「美琴、さっき妹とどこか行ったんじゃ……」

 

 首を傾げる彼女に、上条はピンとくる。

 

「……って、妹の方か。すごい、そっくりだ」

「お姉様と違って、ミサカには電子線や磁力線を追うスキルがないので、この視覚化デバイスが必要なのです、とミサカは懇切丁寧に説明します」

 

 缶を半分ほど手渡すと、彼女は器用に受け取った。

 

「さっき、美琴に連れて行かれてなかった?」

「いえ、ミサカはあちらから来ました、と視線で示します」

 

 示された方向は……全然違う場所だった。

 まあ、そんなこともあるのか、と上条は納得することにした。

 

 ジュースと一緒に、不思議な出会いを抱えて、家路を歩いていく。

 

 
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