No.308170

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そういえば、こんなのも書いたんだったけか……。

とある二人のとある朝の邂逅。

2011-09-26 22:55:35 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:575   閲覧ユーザー数:574

 ある日、私達は偶然に出会った。

 

○

 

 朝、目が覚めると既に遅刻ギリギリの時間だった。私は大急ぎで着替えなければならないの

に、思わず慎ましい胸元を丁寧にメイクしてしまう。苦笑いを浮かべながら制服に着替え終え

ると、タイとセカンドバッグを手に自分の部屋を飛び出した。

 居間の扉を開くと母に文句を付ける。

「何で起こしてくれないのよ」

「起こしたけど起きなかったのは貴方でしょう」

「偶にはしっかりと起こしてよ」

「偶にはしっかりと起きなさいよ」

 最早朝の挨拶と化した愚痴の応酬を終えると、コップ一杯の水を一息に飲み干す。

 既にこんがりと焼き上がっていた食パンを手にして、居間を後にする。

「出会いがあると良いわね」

 母に皮肉たっぷりに揶揄される。

「一体何時の時代の少女漫画よ、古過ぎるわ」

 私もたっぷりと嫌味を込めて言い返す。

 それを出掛けの挨拶代わりにし、私は食パンを咥えて、朝の眩い光へと駆け出した。

 

●

 

 僕は街中をハイペースで駆け抜けていた。今日に限って寝坊したのだ。皆勤賞ペースだった

のに口惜しい。何とか間に合いそうだけれど、間に合った所で遅れている事には変わりない。

しかも食パンを咥えて街中を走るなんて、少女漫画の主人公か僕は。僕が可憐な少女だという

のなら、この状況も似合うのかも知れないけれど。学生鞄の中身は軽いのに、その他にも余計

な重荷を抱えている。これがまた重くて、ストラップが肩に食い込んで痛い。なんで僕は今度

の課題をカラーインクなんぞで仕上げようと思ったのか。しかも、ホルベインのドローイング

インク。どうせならドクターマーチンのラディアントにしておけば、もう少し軽かっただろう。

せめてもの救いは学校までがそんなに遠くなくて、道のりがひたすら真っ直ぐな事くらい。あ

ぁ、もうっ! 何だってこう急いでる時に限って、余計な事ばかりが頭を過るのか。というか、

全力疾走じゃ、食パンを咥えてても食べられやしないし。何で咥えて走り出したんだか。

 そんな有耶無耶な思考で走っていると、目処にしている角が近付いてきた。あそこを超えれ

ば、校門に到るまでの時間は三分弱。朝礼前の予鈴はまだ鳴っていない。ギリギリ間に合いそ

うだった。

 気合を入れなおしてペースを上げる。

 角に近付くと、その向こうからバタバタと走る足音が聞こえてくる。

 不味い。咄嗟に止まろうとするも制動しきれず、僕は横道の前へと勢いよく飛び出してしま

った。

 

○

 

 流石に毎日走っていると、息に余裕が出てくるな。なんて胡乱に考え続けながらの全力疾走。

次第に幹線道路が見えてきた。突き当りを曲がれば残すは直線のみ。アウト・イン・アウトで

速度を落とさず曲がり切ってやる。

 そう意気込んで本道に近付くと、角の向こうから走る足音が聞こえてきた。

 あっ、やばっ、ぶつかる。当然ながらブレーキを掛けるのが遅れた私は、そのまま本道へと

飛び出してしまった。

 

●

 

 激しい衝撃に僕は蹌踉めいた。

 か弱い悲鳴が聞こえて、咄嗟にそちらを見遣ると、ふわりとした明るい髪色の女の子が目に

入った。痛みに支配されて朦朧とする意識のまま、僕はぶつかった相手に手を差し伸べて、声

を掛ける。

「大丈夫? ごめんね――」

 思わず見惚れてしまった。そこには僕が憧れる、草原に咲く一輪の華みたいに可憐な女の子

が座り込んでいた。

 僕はその娘から目を離せなかった。

 

○

 

 激しい衝撃に私は地面に叩き付けられた。

「きゃっ、痛ったぁ……」

 私が強かに腰を打ちつけて悶絶していると、掠れがかったクールな声に気遣われた。その声

の主を曖昧な意識で眺めると、黒くて艶やかなロングヘアが、差し伸べる手の肩口から胸元へ

と、さらさらと流れ落ちていた。

「大丈夫です。こちらこそ、すみませ――」

 思わず見惚れてしまった。見上げるとそこには、私がなりたくてもなれない、背が高くて、

胸が大きくて、それでいて引き締まった体つき、そんな絶妙なプロポーションで冷ややかな佇

まいの女の子がそこに居た。

 私はその娘から目を離せなかった。

 

◎

 

 辺りに朝礼前の予鈴が鳴り響く。私達はその音に我に返ると、自分達の理想と見詰め合った

ままだった。

 はっとして、私達は目を逸らす。あぁ、顔が火照ってくる。高鳴る鼓動に思考が止まる。何

か視界も潤んできた。まるで好きな男の子を目の前にしている様な――

「「えっ?」」

 私達は再び向き合って見詰めると、思わず声を大にしていた。

「「理想って、そっちの理想!?」」

 どうやら私達はともに同じ事を考えていたようだ。

 

 こうして私達の在り来たりの漫画の様な出会いは、意図だにしなかった方向へと向かい、走

り出してしまうのであった。


 
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