第3弾 一緒に行くから
和人Side
2025年12月7日の日曜日である今日、菊岡との話しを終えた俺は景一に電話を掛けた後、
大切な女性との待ち合わせ場所である皇居の大手門前に来ている。
その場所に着いた俺は彼女の姿を捉えたが、何処か心ここに在らずとしているので苦笑してしまう。
いつも通りに歩み寄った時、彼女が呟いた。
「現実世界と仮想世界の違いって、なんなのかなぁ…」
「情報量の多寡だけだよ、明日奈」
「ひゃあっ!?」
その呟きに簡単に答えると驚きのあまりに彼女、明日奈は僅かに飛び上がり、俺はその様に思わず笑みが零れる。
「ひ、ひどいよ、和人くん///! わたし、びっくりしたんだからね///!」
「くくっ、ごめんごめん…。だけど、あまりボーッとするのは感心しないぞ。明日奈は美人なんだからさ…」
「う…は、はい…//////」
可愛らしい怒り方をする明日奈に軽く謝りつつも、俺が放った言葉の意味を理解した彼女はすぐに大人しくなった。
明日奈は1人でいると何かとナンパされるから、少しは危機感を持ってもらわないとな。
「その服、似合っているよ……それに、なんだか思い出す…」
「ありがとう…/// でも、うん、思い出すね…」
明日奈の服装は白のツイード、その下にアイボリーのニットと赤いアーガイル・チェックのスカートだ。
その姿がかつての『血盟騎士団』としての彼女を思い浮かばせた。
明日奈自身もそう思ったようだ。
「和人くんも似合ってるよ。最近では珍しく真っ黒だけど」
「出来るだけ一色にしないようにしていたけど、ずっと黒に統一していなかったから、偶にはいいかなって」
俺の服装は黒無地のカットソーに黒いレザーブルゾン、色落ちしたブラックジーンズという前述されたとおりの黒一色である。
「っと、話しているのもいいけど、歩こうか」
「うん///」
明日奈は俺の腕に自分の腕を絡めてきたので、彼女の歩みに合わせて歩き出した。
俺達は門をくぐり、詰所で入場票を受け取り、一般開放されている『東御苑』へと足を踏み入れた。
明日奈に何故デートの場所を皇居にしたのか聞かれたので、近くで用事があった事を暈かして伝え、
あとは少しこの場所について話してみたい事があると言った。
皇居は一種の巨大な不可侵エリアにして東京の中心であること、物理的にも情報的にも侵入禁止であること、
何故侵入が不可能なのかということ、そして一種の『異界』であると話すと彼女は納得した様子で頷いていた。
しばらく歩いた俺達は広大な芝生へと出た、この場所こそ江戸城の本丸跡であり、大奥の舞台となった場所が北側だと話す。
明日奈と共にその場所へと歩いている途中、金髪の姉妹を連れた外国人夫婦とすれ違い、写真撮影を頼まれたのでそれに応じた。
お礼にと俺達の写真を撮ってもらう事になったので撮ってもらった後で写真のデータを貰い、その家族と別れを告げた。
「………///」
「明日奈、どうかしたのか?」
「え、あ、えっと…その、ね…///」
あの一家を見ながらまたも上の空になった明日奈に声を掛ければ、どもりながら照れた様子を見せ、去りゆく一家の方をみた。
あぁ、なるほど……俺は、なんとなく彼女が考えている事がわかり、思ったままの事を告げる。
「俺達も、あんな家庭を築こうな…///」
「っ~~~~~/////////」
さすがの俺も少し照れながら言うと明日奈はいますぐにでも倒れてしまいそうなほど、
これでもかというくらいに真っ赤になり、それでも俺の手を強く握ってくれた。
それからまた歩きながら明日奈と色々なことを話した。
先程、俺が明日奈に言った現実と仮想の違いは情報量の多寡という言葉の意味。
それを話し、彼女に進化したアミュスフィアによって再現された手と現実の手を感触だけで区別できるかと問いかけてみると、
「出来るよ、和人くんとキリトくんの手なら…」
即答された。嬉しさが込み上げたものだから俺も笑みを浮かべながら、
「俺も、明日奈とアスナの手なら出来るよ…」
そう返し、彼女は嬉しそうに頬を染めて微笑んでくれた。
それから現実世界の方が情報量の多寡が圧倒的に多いことを伝え、
仮にAR機能(アミュスフィアの覚醒状態使用の事)を実装したところでそれが本物かそうでないかを判別できてしまう。
現存するフルダイブ機器では残念ながら常用ARは実現不可能であるが、いつか即座にフルダイブが可能な時が来れば…、
「世界の壁を超えて、いつもユイちゃんと一緒にいられる…」
「そんな日が、必ず来る……俺はそう信じている…」
お互いの手を掌で重ね、ぎゅっと握り合う。
「もう少し、ゆっくりしたかったけど、そろそろ帰ろう。ここ、5時には閉まるから」
「そうだね/// あ、春になったらみんなで来ようよ」
「ああ、そうしよう」
そして北側の平川門出口に向かって歩いていると明日奈が話しかけてきた。
「今夜、ログインできる? 今日のこと、ユイちゃんにも話してあげようよ」
「(くすっ)そうだな、ユイにも話してあげよう」
ユイも喜んで話を聞いてくれるだろう……だが、菊岡の依頼が始まれば終わるまではその時間も作る事が出来ないか…。
「和人くん、どうかしたの?」
「ん、あぁ、ちょっとな…」
俺の様子に気が付いた明日奈が問いかけてきたので、言葉を濁そうと思ったがやめた。
いまこの場で言っておくのがいいだろう。
「明日奈、大事な話しがあるんだ…」
「う、うん…」
俺の様子に彼女は少し動揺しながらも真剣に言葉に耳を傾けようとしてくれている。
いまから伝える言葉が明日奈に心配をかけさせるものだと思うと申し訳なく思うが、言わなくてはならない。
「俺、近いうちにALOの『キリト』を別のゲームにコンバートさせるんだ」
「……え?……………え、えぇぇぇぇぇっ!?」
明日奈が驚きのあまりに叫んだ、そりゃもう大きな声で。
「ど、どうして…? かずとくん、ALO…や、辞めちゃうの…?」
「ち、違うって…ほら、落ち着いて、な?」
驚きに眼を見開かせた明日奈はその眼を潤ませ、泣いてしまうのではないかとかなり焦った。
彼女の頭を優しく撫でてなんとか落ち着かせる。
「数日の間だけだ。訳ありで少しの間他のVRMMOの様子見をしないといけない、それが終わったらすぐに再コンバートするから」
「様子見なら、新規アカウントでいつもやってるじゃない。なんでコンバートまで…」
むっ、さすがに流されてはくれないか…。
「まぁ、実は菊岡からの依頼でな…」
「菊岡さんからの…?」
怪訝そうな表情を浮かべる明日奈に俺は一部を意図的に省いて説明した。
話しを聞き終えた明日奈はまだ納得がいっていないようである。
「確かにあの人からの依頼なら、仕方がないのかもしれないけど…でも、様子見の依頼なら今までにもあったでしょ?
その時だって、コンバートしないでアカウントを取ってやってたのに…」
「いや、念には念を込めてるだけだよ。それに景一も同行してくれるから大丈夫だ」
彼女を安心させて納得させようと言ったこの言葉が失態だった。
「景一君も? コンバートするのに景一君まで行くって、危険ってことじゃない!」
「っ、景一は銃に詳しいから…ほら、俺が行くゲームは銃の世界なんだよ」
まさか逆に明日奈を刺激してしまう事になるとは…、どうやら俺の表情が変化した事に彼女は気付いたようだ。
さらに俺へと問い詰めてくる。
「危険なんでしょ? だから『キリトくん』をコンバートさせて、景一君も『ハジメ』君をコンバートして、
何かを解決しようとしているんでしょ!?」
「それはっ…」
明日奈のここまでの剣幕は初めてだ、その様に俺は言葉に詰まってしまう。
「どうしても行くのなら、わたしも一緒に行くわ!」
「駄目だ! それは絶対に!」
「なんでよ!? 危険なのは和人くん達だって同じでしょ!?」
「それはそうだが…ユイはどうするんだ!」
「和人くんが危険なとこに行くのなら、ユイちゃんだってわたしに賛成してくれるわ!」
確かに事情が事情なだけにユイなら明日奈に賛成するだろう。
「だが、それでも…「いや、なの…」…え?」
先程と打って変わって小さな声で呟いた明日奈は俺の上着の裾をしっかりと握りしめ、その肩は震え、
俺の視線と合わせた瞳の端には涙が滲んでいた。
「嫌なの…ALOの時みたいに、和人くんが誰かに傷つけられるのが…。
怖いの…SAOの時みたいに、和人くんが、キリトくんが……消えちゃうんじゃ、ないかって…。
もう、見てるだけは嫌なの!」
「あ、すな……おまえ…」
彼女の想い、震えと涙は不安と恐怖から。
改めて彼女には硬く、深い楔が打ち込まれていると実感するが、それは俺自身も同じことだ。
そもそも、自分で一心同体と思っておきながら明日奈を連れていけないと言うほうがおかしいか。
俺は周囲に人がいないことを確認し、彼女を優しく抱き締めた。
「ありがとう、明日奈…」
「かずと、くん…」
「俺と一緒に、戦ってくれるか?」
「当たり前だよ…。わたしは、和人くんとユイちゃんの為にいるんだから…」
強情だけど、俺とユイの事を第一に考えてくれる明日奈を、俺は愛おしく思った。
和人Side Out
To be continued……
後書きです。
和人と明日奈のデートでした~、イチャつきありでしたがシリアスもありました。
というわけで明日奈さんもGGOに参戦だお、過剰戦力だけど気にするんじゃないだお。
ちなみに次回は詩乃の視点からです、遠藤とかいうバカ女が出てきます。
恭二君?なにそれ、美味しいの?な、話しになりますw
それでは・・・。
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第3弾になります。
今回は明日奈とのデートですね、イチャつくけれどシリアスもあるお。
どうぞ・・・。