No.1192851

涙は渇かない0話

家庭教師ヒットマンリボーンの二次創作です。
ツナと幼馴染の青春話になります。中編です。

2026-09-06 01:39:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:73   閲覧ユーザー数:73

 

第0話「ツナと私」

 

 私は藍沢雨。

 

 沢田綱吉――通称ツナは、昔からの幼なじみだ。

 鈍臭くて、泣き虫で、すぐに転んでは泣いていた。よく虐められていて、私はそのたびに間を取り持って、なあなあで友達になった。庇うのは、正直怖かった。私自身も標的になるかもしれないという恐怖があった。だからこそ「間を取り持つ」という形をとっていた私は、きっと卑怯者だった。

 それでも、ツナはそんな私に懐いてくれた。友達でいてくれた。

 

 中学に入ってから、ツナの状況はさらに悪くなった。

 成績は学年で最下位、運動もダメ。虐めはますますひどくなって、気づけば私だけが彼の友達だった。

 

 私は彼の勉強を見始めた。というより、ほぼ毎日ツナの家に通って、宿題を手伝い、テスト勉強を教えるようになっていた。

 けれど、ツナはいつの間にか、私に甘えるのが当たり前になっていた。

 勉強の時間は、気づけばゲームになり、雑談になり、気ままなおやつタイムになって、まともに机に向かうことは少なかった。

 

 ――このままじゃ、いつまで経っても変わらない。

 

 そう危機感を抱いたのは、中学二年になってからだった。

 私は意を決して、ツナに少し厳しく接するようにした。甘やかすのはもうやめようと。

 ……でも、そうしたらツナは毛布にくるまって拒否反応を示すようになった。

 「ダメだ、これは」と思ったのは、そのときだ。

 

 それでも、なんとか彼の成績は少しずつ――本当に少しずつ、下から数えたほうが早いくらいには改善した。私が嫌になって投げ出さず、根気よく付き合った結果だった。

 

 だけど、成果が思うように出ないことは正直つらかった。本気で頑張ったのに、たったこれだけかって。

 

 それでも、ツナは逃げ出しながらも私を気遣ってくれた。

 コンビニで私の好きなお菓子を買ってきてくれたり、勉強のあとに一緒に食べる夕飯を準備してくれたり。仲直りの形が、なんとなく私たちの中でできあがっていた。

 

 そんな、ゆるやかな日常がこのまま続くと思っていた――あの日までは。

 

 その日、私はツナと一緒に登校していた。朝の空気が少しだけ肌寒い春のはじまり。

 

 前方から、スーツ姿の……赤ん坊が歩いてきた。

 

 ……赤ん坊、スーツ……? え? 一人で歩いてる?

 歩けるの? いや、三歳くらいなら歩くか……でも、あれ三歳? え、赤ん坊だよね?

 

 混乱している私の隣で、ツナが「ヒッ」と短く悲鳴を上げた。見ると、彼の顔は真っ青で、目の下にはくっきりとクマがある。昨日は私が用事で行けなかったけど……もしかして、何かあった?

 

 ガタガタと震えながら、ツナは私の背後に隠れて、しっかりとしがみついてきた。

 その視線の先、スーツの赤ん坊がツナを見て言った。

 

 「それがツナの嫁候補か」

 

 「は?」

 

 突拍子もないその一言に、私は素で聞き返した。

 嫁候補? 誰が? 私が? ツナの? ……ちょっと待って、何言ってるのこの赤ん坊?

 

 混乱している間に、赤ん坊はさらに言葉を続けた。

 

 「とりあえず、ツナと嫁候補の藍沢雨。お前ら二人してこのオレが鍛えてやる。特にツナ、逃げれると思うなよ」

 

 赤ん坊とは思えない落ち着いた口調で、まるで当たり前のようにそんなことを言った。

 

 ――こうして、私とツナの当たり前の日常は、突如として音を立てて崩れていったのだった。

 

 
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