No.1192852

涙は渇かない一話

家庭教師ヒットマンリボーンの二次創作です。
ツナと幼馴染で青春を送ります。中編です。

2026-09-06 01:48:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:68   閲覧ユーザー数:68

第一話「ツナの思惑」

 

 昼休み、屋上へと続く静かな階段で、私はツナと並んでお弁当を広げていた。

 話題はもちろん、今朝のあの赤ん坊――リボーンのことだ。

 

 「昨日さ、雨が用事で来なかったじゃん? あのあと家に帰ったら……赤ん坊が部屋にいたんだよ……」

 

 まさかの展開に、私は思わず手を止めた。

 ツナ曰く、掃除当番を押しつけられたあと、いつものように一緒に帰ろうとしていたらしい。でも私が先生に呼ばれ、先に帰れと伝えて別れた。その帰宅先に、スーツを着た赤ん坊が待っていたのだという。

 

 「名前はリボーン。イタリアから来たってさ。目的は……オレをマフィアのボスに育てること、だって」

 

 「……マフィア?」

 

 ツナの目の下にはくっきりとクマができていた。寝不足だと言う。そりゃそうだ。初対面の赤ん坊に将来を決められ、無理やり訓練されたら、私でも眠れない。

 

 「で、今朝のあれに繋がるのね。赤ん坊の家庭教師とか、聞いたことないけど……」

 

 ツナは申し訳なさそうに頭を下げてきた。

 

 「ごめん、雨。リボーン、雨のことも調べてて……妙に詳しいし、脅されるし……気がついたら“嫁候補”とか言われてて、ホントごめん。勝手に巻き込まれて、ままごとに付き合わせる形になって……」

 

 ツナはだらしないところも多いけど、根は本当に優しい。だからこそ、こうして素直に謝ってくれる。

 

 「いいよ。赤ん坊のごっこ遊びでしょ? 私でよければ付き合うよ。……でも、ツナは今日はちゃんと寝て、明日は勉強頑張ってね?」

 

 私はいつも通り、勉強の話を忘れない。これが、私とツナの日常だから。

 

 だけどツナは、ますます困った顔をして呟いた。

 

 「リボーンが言うんだ……“雨にも勉強させるべき”だって。今日、うちに来てくれない? 雨までオレみたいに“手荒な教育”されたら困るし……」

 

 ――手荒な教育ってなに、それ。

 

 いや、待って。私、赤ん坊に何されるの!? というか、私、別に勉強できないわけじゃないよ? 赤点は取らない、普通の成績だよ? それに、赤ん坊から勉強を教わるってどんな気持ちで臨めばいいの?

 

 さらにツナは、顔を赤くしてとどめを刺してきた。

 

 「リボーン曰く、“嫁になるなら教養は必須”……らしいから、その……ま、ままごとの一環ってことで」

 

 ……どうやら“嫁候補”の扱いは継続中らしい。

 ツナが顔色を変えるほどの赤ん坊、リボーン。ヒッと情けない声まで出してた。となると、ここは覚悟を決めるしかない。

 

 ――それが、私とツナの将来を大きく左右する一歩になるなんて、思いもしなかったけど。

 

 放課後のチャイムが鳴ると同時に、私は迷いなくツナの家へ向かった。

 

※※

 

 沢田綱吉は、小学生の頃から「自分の人生はハズレくじだ」と思っていた。

 何をやってもダメ。運動もダメ、勉強もダメ。人付き合いも苦手で、ついたあだ名は「ダメツナ」。

 そんな彼の毎日は、ただ過ぎるだけの“消化試合”だった。

 

 でも――ある日、藍沢雨が現れた。

 

 特別目立つ子じゃなかった。でも、誰よりも普通に接してくれた。いじめられてるツナに、誰ともつるまず、でも否定もせず。間に入る形で話してくれた。

 その中途半端な優しさに、ツナは救われた。いや、あれが精一杯の“本当の優しさ”だったのだと、今なら分かる。

 

 雨は、裕福な家の子だった。それでも庶民と変わらない雰囲気で、地に足のついた言葉を話す。

 ツナは、雨のそのさりげない優しさに惹かれていった。気がつけば、放課後を一緒に過ごすのが日課になっていた。

 

 中学に上がってから、ツナの成績はついに学年最下位に。いじめは悪化し、「ダメツナ」の名は本格的に定着してしまった。

 でも――雨は離れなかった。

 「勉強して、見返そう!」と、ツナの手を握って言ってくれた。

 それが、彼にとってどれほど救いになったか……言葉にはできなかった。

 

 雨の家に通うことはなかったが、彼女は毎日ツナの家に来て、勉強を教えてくれた。

 その日々は、まるで小さな“恋人”のような関係になっていった。周囲もそう噂し始め、ツナはそれを否定せずに受け入れた。

 

 「雨がずっと家にいられるように」、母に夕食の準備を頼んだことすらあった。

 

 ――だが、その日常は唐突に終わりを迎える。

 

 赤ん坊が現れたのだ。

 名前はリボーン。イタリアから来たというマフィアの殺し屋。ツナの家庭教師として、彼を“ボス”に育てるために派遣されたのだと語った。

 

 ツナは思わず、「雨が勉強を教えてくれるから必要ない」と拒否した。

 だが、リボーンはニヤリと笑いながら言った。

 

 「藍沢雨との関係、オレが終わらせてやってもいいんだぜ?」

 

 次の瞬間、殴られた。容赦のない一撃だった。

 ツナは、あっさりと屈した。自分のためじゃない。雨のために。

 

 そして、リボーンは聞いてきた。

 

 「藍沢雨はお前の恋人だと聞いたが、本当か?」

 

 ツナは顔を真っ赤にして、目を逸らした。

 

 「……いつかは……本当に、したい。今は、まだ……友達のままでいたいだけなんだ」

 

 それが彼の“思惑”だった。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択