第二話「ツナと暮らす」
放課後、ごっこ遊びに付き合うためツナの家を訪れると、待っていたのは予想外にも本格的な勉強会だった。講師はもちろん、例の家庭教師・リボーン。相変わらず赤ん坊の姿をしているのに、教え方はやけに本格的で分かりやすい。ツナには容赦ないスパルタだけれど、私には普通に丁寧に教えてくれた。というか、学校の先生より、夏期講習の塾講師より、ずっと分かりやすい。
「……これなら私の成績も伸びそう!」
思わず頬がゆるむ。そんな私の様子を見ていたリボーンが、ふと話題を変えた。
「なあ、雨。ツナが京子と付き合うことになったら、どうする?」
突拍子もない質問に、ツナが「ばっ……リボーン、やめろよ!」と顔を真っ赤にして抗議したが、返す刀でリボーンに口を塞がれていた。
けれど、私はツナが京子ちゃんに特別な感情を抱いていないことを知っていた。
「うーん、ツナってああいうアイドル系の陽キャ女子には興味なさそうだし、もし告白されても断ると思うよ」
率直にそう答えると、リボーンは「フーン」と意味深な返事だけをして、再び勉強に戻った。
こうして夕食の時間まで勉強が続けられたわけだけど、はっきり言ってリボーンの教え方は凄かった。正直、私が教えるよりずっと効率的。ツナのためにも、このまま家庭教師をお願いしたいぐらいだ。むしろ、私も嫁役でいいからこの「ごっこ」に付き合い続けたい……そんなことをぼんやり考えていたときだった。
「雨は基礎ができているから、これから俺が直接指導していく。ツナ、お前は基礎の基礎からだ。……雨、お前の荷物は明日届くから、今日からここに住め」
――へ?
ツナと私は声も出ずにぽかんと口を開けたまま、間抜けな顔を見合わせた。
「ママンから聞いた。今、お前の保護者が不在で、一人暮らししているらしいな。俺が連絡を取ったら、“雨をよろしくお願いします”って頼まれた。女子中学生の一人暮らしなんて危なすぎる。だから、沢田家で居候してもらうことにした」
リボーンは淡々と説明したが、その言葉には妙に説得力があった。思った以上にまともで、ちょっと感動すらしてしまった。
ツナはというと、真っ赤な顔で「……あ、雨と四六時中一緒……?」と硬直していたけれど、
「だから、寝る前まで勉強するぞ」
と告げられた瞬間、現実に引き戻されてげんなりした表情を浮かべていた。
七時過ぎまでリボーンの勉強指導は続いた。その合間、リボーンは「ごっこ」の真相について語ってくれた。どうやらこの設定は、ただの子供の遊びではなかったらしい。
リボーンは、イタリアのマフィア組織・ボンゴレファミリーのボス、ボンゴレ9世の依頼を受けて来日したのだという。そしてツナは、代々続くボスの血筋を継ぐ正統な十代目候補――初代の血を引く最後の生き残りらしい。元々は他に候補が三人いたが、何者かに殺されてしまい、残ったのがツナだけだったと。
「ふーん……」
私はそれなりに驚きつつも冷静に聞いていたが、当のツナはすでに知っていたのか、完全に興味を失った顔をしていた。
「ツナがマフィアのボスになるなら、奥さんになる人は大変だね」
私がそう言うと、リボーンはにやりと笑って、
「だから、お前も鍛えるんだ、雨」
と、まるで当然のことのように言った。
――筋トレ? 護身術? それとも料理修行?
そんな妄想をしていたら、「とりあえず明日から走り込みだ」と、いきなり運動メニューを言い渡された。思わず絶句する私をよそに、ツナにも「お前もな」としっかり釘が刺された。
その夜、リボーンはさっさとパジャマに着替えて、ハンモックの上で寝てしまった。あんなに厳しいくせに、寝つきだけはやけに良い。
その隙をついて、ツナがこっそり声を掛けてきた。
「……雨、ゲームやろう」
「え、明日走り込みあるのに?」
「今だけ、今だけだから!」
ため息をつきつつも、結局私はツナのペースに乗せられて、今日もまた、なんだかんだで付き合ってしまうのだった。
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家庭教師ヒットマンリボーンの二次創作です。
ツナと幼馴染で青春を送る中編です。