No.1193094

涙は渇かない七話

家庭教師ヒットマンリボーンの二次創作です。
ツナと幼馴染で青春を送ります。中編です。

2026-09-11 00:17:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:51   閲覧ユーザー数:51

第七話「ツナと出し抜け」

 

 さらに一週間ほど経った頃、私はようやく並盛へ戻ってきた。実はおばあちゃんの用事で遠方へ行っていて、家の手伝いをしていたのだ。久しぶりに帰ってくると、聞き捨てならない話を耳にした。

 

「ツナが入院した?!」

 

 幸い軽い入院だったらしいが、誕生日を病院で迎えたと聞いて、私は慌ててケーキ作りに取り掛かった。キッチンに立つと、何人かが「何作ってんの?」と興味津々に覗いてきたが、私はいつも通りの、スポンジに生クリームをのせただけの素朴なケーキを作った。

 

 だって、ツナが一番好きなのは、これだから。

 

 完成したケーキをツナに差し出すと、彼はぱっと笑って、

 

「やっぱ、一番は雨のケーキだね」と、とても嬉しそうに食べてくれた。

 

 その瞬間だった。

 

「雨、友達やめて、オレと付き合って」

 

 一瞬、意味が分からなかった。

 「付き合う」って、どこに? どこかに行くの? と、首を傾げていると――周囲の反応に気づく。獄寺くん、山本、ハルさんの顔が一斉に赤くなって、口を押えたり、目を見開いたりしていた。

 

 え……?

 ――そういう意味!? 恋人としての「付き合う」ってこと!?

 

 顔が一瞬で熱くなった。まるでりんごみたいに真っ赤になってしまった私が、思わず叫ぶ。

 

「なんで皆がいるところで言うのよ! ツナ、空気読んでよっ!」

 

 ツナはというと、落ち着いた表情のまま、あっさりと言った。

 

「皆、もう知ってるから」

「し、知ってるってどういう……?」

「雨は気づいてないけど、小学生の頃から、オレたち付き合ってるって思われてたんだよ」

「はああっ? 何それ意味わかんない」

「オレは隠してたわけじゃなくて、雨が気づくまで待ってただけ。でも、このままだといつまで経っても伝わらなさそうだから、ちゃんと告白することにした。……逃げられたくないからさ」

「わ、私は逃げてないもん」

「逃げてる。チャットも全然返してくれなかったし」

「そ、それは……忙しかったからで……」

 

 ツナはふっと柔らかく笑って、真っすぐに言った。

 

「オレ、雨が本当のことを言えるようになるまで待つよ。でも、まずは、オレと付き合ってくれる?」

「……押し強すぎじゃない?」

「そうかなぁ? これでも、けっこう待ったんだけどな」

 

 私は視線を落とし、まだ整理しきれない気持ちを抱えたまま、そっと言った。

 

「……まだ、飲み込めてないから。返事は、明日する」

「うん、いいよ。待ってる。……イエス以外ないと思ってるけど」

「なんなの、その自信……囲い込み上手?」

「かもね。でも、雨限定だよ。そんなの、他の子にはしないし」

 

 ツナの言葉が胸の奥にすっと入ってくる。だけど同時に、まだ少し戸惑っていた。

 

 ふと周囲を見ると、獄寺くんが顔を真っ赤にして「さすが十代目、抜け目ない告白ッスね!」と絶賛していた。山本は「二人らしいなあ」と爽やかに笑っている。

 

 けれど、ハルさんの姿はもうなかった。ビアンキさんも、気づいたらいない。

 

 ……そうか。

 これって、ハルさんにとっては失恋なんだ。胸がちくりと痛んだ。

 

 でも、私が慰めに行くのは違う気がする。ビアンキさんなら、そっと寄り添ってくれるはずだ。

 

 最近のツナは、なんだかちょっと“罪な男”になってきたな、と思う。京子さんの目も引いて、ハルさんにも慕われて――。

 

 だけど、私は――

 

 私は、ツナが好きらしい。

 「友達以上かどうか」と問われれば、まだ即答はできない。でも、自分以外の誰かと一緒にいる未来を想像すると、どうしようもなくモヤモヤしてしまう。

 

 ああ、やっぱり私はツナと一緒にいたい。

 恋とか愛とか、そんな言葉の正体はまだよく分からないけれど、ツナの隣にいると落ち着くんだ。

 

 ずっと一緒にいられたらいいな。

 ……出来れば、平穏な日常の中で。

 

 だけど、それが叶わないことも分かってる。

 私がまだツナに隠していること。

 ツナの周囲が騒がしすぎて、平穏とは程遠いこと――。

 

 それでも、私は決めた。

 

 明日、ちゃんと返事をしよう。


 
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