No.1193060

涙は渇かない六話

家庭教師ヒットマンリボーンの二次創作です。
ツナと幼馴染で青春を送ります。中編です。

2026-09-10 08:22:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:57   閲覧ユーザー数:57

第六話「ツナとモヤモヤ」

 

 夏休み。ツナは補習に通っていた。ある日のこと、補習の宿題がなぜか大学レベルの難問で、教室中が軽いパニックに陥った。誰も解けないその問題を、あっさりと解いて見せたのはリボーンだった。

 

 彼曰く「天才数学者のボリーン博士」――いや、それ絶対仮名でしょ……。やっぱりマフィアの世界は、奥が深いというか謎が多い。

 

 その後はいつものように、ランボとリボーンが小競り合いを始め、勢いあまって近隣のマンションの窓ガラスを破壊。まさに日常。だが、その最中に、見知らぬ少年がツナと同じ年頃で巻き込まれ、気絶してしまった。

 

 放置されそうだった彼を見て、私は慌てて近くの中学の友達に連絡し、彼を自宅まで運ぶ手伝いをお願いした。無事に帰宅した彼の家族はとても親切で、ついでに夕食までご馳走になってしまった。彼の姉とも連絡を取るようになったのだが、なぜだろう、なんとなく心に引っかかっていた。

 

 その夜、帰宅するとツナがぷんぷんに怒っていた。

 

「どこ行ってたんだよ、雨! 心配したんだからな! スマホ見ろよ、何通チャット送ったと思ってんの!」

 

 反省しきり。もう沢田家にお世話になっている身なのだから、ちゃんと連絡を入れておくべきだった。お詫びに、もらったお菓子を渡して、なんとか機嫌を直してもらう。

 

 そんなふうにバタバタと過ぎていった夏休みも終わり、始業式の日がやってきた。ツナと一緒に登校中、笹川さん――じゃなくて、これからは京子さんと呼ぼう――に会った。すると突然、笹川兄が登場し、「ボクシング部に入れ、沢田ァァ!!」と熱烈なラブコールを送ってきた。

 

 暑苦しい……いや、熱い人だ。座右の銘が『極限』なのは伊達じゃない。ツナはドン引きしていたが、最終的には押し切られて放課後にボクシング部へ行くことに。たぶん京子さんがいたから、かっこいいところ見せたかったんだろうな。

 

 案の定、放課後の部活にはリボーンが乱入。パオパオ老師ばりの混乱を巻き起こし、私が口を開こうとした瞬間、飴玉を口に突っ込まれて黙らされた。「お前は黙ってろ」と囁かれ、何かを警戒しているような顔だったけど……まさかね。

 

 リボーンの死ぬ気弾を受けたツナは見違えるように覚醒し、笹川兄に勝利。が、ますます気に入られてしまった。これでまた知り合いが増える――ツナの、ね。

 

 最近のツナは本当に変わってきた。友達もできて、毎日が楽しそうで。それは嬉しいことだけど、私の心にはどこか小さな棘が刺さっていた。

 

 なんだろう、このモヤモヤは。

 

 置いてけぼりにされている気がして、勝手に拗ねた気分になった。ツナはどんどん前に進んでいるのに、私はまだここに立ち止まっている。

 

 だから私は少し距離を置くことにした。家が経営するホテルを手伝う名目で、沢田家を一週間だけ離れることにした。

 

 ※※※

 

「雨、スマホに出ないんだよな……」

 

「学校も休んでるし、また家の手伝いとかじゃね?」

 

「でも、雨って時々すっげー謎な行動とるよな」

 

 ツナ、獄寺、山本の三人は教室でそんな話をしていた。十月に入っても、相変わらずの騒がしさ。ちなみにリボーンは昨日、山本の家の寿司屋で無銭飲食をやらかし、ツナは働き詰めになった。結局、被害総額は三十万円。山本が「ちまちま返してけよ」と笑って肩を叩いたのが昨日のこと。

 

 一週間で戻るはずだった雨は、もう十日以上も帰ってこない。スマホの既読もつかない。

 

「……避けられてる、気がする」

 

 ツナがぽつりと呟いた。

 

「十代目、なんか怒らせたんスか?」

 

「いや、明確な理由はないけど……心当たりは、まぁある」

 

「あるんスか……」

「今まで、ずっと二人だけの時間だったから。急に人が増えて、環境が変わって、雨が戸惑ってるのかも」

 

 獄寺は「そんなことで?」という顔をしていたけど、山本は「確かにな。ツナと雨って、ずっとペアって感じだったし」と納得した様子だった。

 

「つまり……今の空気が嫌なんじゃなくて、変わっていくことに寂しさを感じてるってことか?」

「うん。雨は優しいから、嫌だとは言わない。でも、きっと戸惑ってる。オレが変わっていくのを、どこかで置いていかれる気がしてるのかもしれない」

「……え、でも、ツナと藍沢って、付き合ってるんじゃなかったの?」

 

 山本の言葉に、獄寺が「ええっ?! 違うんスか?!」と驚愕した。

 

「……言い出せなかったんだ。友達でいた方が、いろいろ楽だと思って」

 

 ツナはスマホをそっと閉じ、小さく笑った。

 

「でも、ちゃんと話すよ。今度こそ、気持ちを伝える」

 

 その言葉に、山本と獄寺はそっと頷いた。

 

「さて、山本の寿司屋に行こう。返済、しないといけないからな」

 

 ツナはそう言って、二人を引き連れて教室を後にした。その背中は、少しだけいつもより、頼もしく見えた。


 
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