第五話「ツナとライバル」
夏の日差しが容赦なく照りつける中、いよいよクーラーが命綱となる季節がやってきた。
そんなある日、沢田家に新たな居候がやってきた。毒使いの殺し屋、ビアンキさん。最初は冗談かと思っていたが、どう見ても本物だ。私もようやく気づいた——これはもう「マフィアごっこ」なんかじゃない。リアルだ。命がけだ。できるだけ平常心を保とうと心がけているが、殺し屋と一つ屋根の下なんて、やっぱりどう考えても平常じゃない。
ビアンキさんはリボーンに任され、ツナの家庭教師の一部を担当しているという。担当教科は……家庭科と美術。
ツナ、どうか生き延びて。
そして迎えた家庭科の初授業。私は内心で新たな騒動の予感に怯えていた。
案の定、舎弟の獄寺くんがツナの家を訪れ、ビアンキさんを見た瞬間、お腹を押さえて逃げ出した。持ってきたスイカだけが残され、後に皆で美味しくいただくことになる。
ツナは逃げた獄寺くんの後を追い、事情を聞いてきたようだった。
二人は異母姉弟らしい。名家の出で、かつてビアンキさんの“ポイズンクッキング”をピアノ発表会のたびに食べさせられていたとか。どうやらそれがトラウマになり、彼女を見るだけでお腹が痛くなる体質になったらしい。
……獄寺くん、本当にお疲れ様です。
家庭科の授業中、ツナから「もう少し時間稼いでおいて」とこっそり頼まれた。理由を聞いても「いいから」としか言わず、ますます不安が募る。
仕方なくビアンキさんと料理を続けていると、ツナの叫び声が響いた。
「ビアンキ! 外、見て!」
ビアンキさんは面倒そうに眉をひそめつつ、できあがった“ポイズンクッキングII”を手に庭へと向かった。
そこには、子ども用プールに浸かる十年後のランボの姿があった。
「ロメオッ!!」
叫び声とともに笑顔になったビアンキさんは、そのままランボに料理を投げつけた。
後日、ビアンキさんは私にこっそり教えてくれた。「十年後のランボが、元カレにそっくりだった」と。そしてその元カレの死因は——「食中毒」だそうだ。
暑いはずなのに、妙に背筋が寒くなる話だった。
*
二日間、祖母の用事で学校を休んでいた私は、ツナと時間をずらして一人で登校する日々を送っていた。
そんなある朝、河原を通りかかったときだった。
「ツナさーんっ!」
女の子の叫び声とともに、制服姿の少女がツナを追い回していた。緑中の制服。あのエリート校の……?
ぽかんとしていると、いつの間にかリボーンが隣に立っていた。
「お前、ライバルが現れたぞ」
ライバル? いきなり何の話? 混乱していると、ツナが例によってトランクス一丁で逃げ回っているのが目に入った。……もう慣れてきたのが怖い。
どうやらこの二日の間に、ツナはその女の子と妙に親しくなったらしい。
モヤモヤする気持ちを抱えつつ、私はツナの着替えを持って河原へ降りていった。
「あ、雨ー!」
私を見たツナは、すかさず背後に隠れようとする。
制服を渡そうとして気づく。びしょ濡れだ。仕方なくタオルを手渡した。
「雨、ありがとう。いつも俺の制服持ってくれて助かるよー」
「その子、すっごい睨んできてるんだけど……どういう知り合い?」
「うーん、リボーンと友達になりたいって言ってて。俺がリボーンを“デビル化”させたって勝手に思って勝負を挑んできたんだけど、獄寺くんが吹っ飛ばして、彼女が川に落ちて、リボーンの死ぬ気弾で助けに入ったら、追い回されて今に至るっていうか……」
「……はぐらかしてない?」
「本当だってば! えっと……俺に惚れたって言ってたし」
「ふーん。彼女にするの?」
「はぁ!? 俺には雨がいるのに?!」
「えっ、私がいると彼女ができないの?」
「ち、違うって! そうじゃなくて……俺には雨がいるから、それでいいんだ!」
「……まぁ、いいから早く着替えて」
これ以上話しても進展はなさそうなので、私はそっと制服を手渡す。
その様子を見ていた女の子が、なおも私を睨みつけていたが、彼女も濡れているのが気になって、新しいタオルを差し出した。
「……ありがとう」
思いがけず、女の子は素直に受け取って、河原を後にした。
最近のツナ、なんだかんだで……モテてるよね。
そんなことを思いながら、私はツナと獄寺くんと並んで登校した。
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家庭教師ヒットマンリボーンの二次創作です。
ツナと幼馴染で青春を送ります。中編です。