No.1194249

とある少女のフコウ説。一話

とある魔術の禁書目録の二次創作です。
上条当麻女成り代わり主で、空の境界の両儀織が体に同居して、二重人格で入れ替わりながら話が進みます。一方通行は上条さんのためにタイムループして何回もループしていたせいで思考が少し歪んでいます。
全三十四話です。

2026-10-07 00:30:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:27   閲覧ユーザー数:27

一、「ある少女の話」

 

 生まれて数日が経った頃、両親の表情に浮かんだ「何処かで見たような気がする」という曖昧な戸惑いを見て、私はようやく悟った。

 ――ああ、転生したんだな、と。

 

 それでも赤ん坊の身で知識無双などできるはずもなく、そもそもこの世界は、現代日本とそれほど大きく違わない。ならばと、私は流れに身を任せることにした。転生したとはいえ、誰かと戦うつもりも、何かを成し遂げるつもりもなかった。ただ、普通に生きていくはずだった――そう、あの夜までは。

 

「うわああああああっ!! 学園都市、治安悪すぎィ!!」

 

 泣き叫びながら、少女は暗い路地裏を疾走していた。速い。自分でも驚くほどの速さで、足を止めることなく、必死に逃げ続ける。

 深夜の学園都市。どこもかしこも明るく輝く街の影には、闇があった。八人の男たちに追いかけられる少女。中学生の身には酷すぎる状況だ。

 

 背後でポリバケツが転がる。自分で蹴飛ばして足止めに使ったのだ。

 けれど効果は一瞬。彼らの気配はまだ近い。

 

 ――七月十九日。

 友達と遊んだ帰りに、少し小腹がすいて入ったファミレス。そこにいたのは、年の近い女の子。ただ、それだけの出来事だった。

 だが運悪く、以前“彼”が懲らしめた不良たちに目をつけられ、騒ぎが起こり、少女は追いかけられる羽目になった。

 

「頼んでた品、まだ来てないのに! 何で私が食い逃げ扱いなの!? ……不幸!!」

 

 涙を溜めた目で、少女は夜の大通りへと飛び出した。風力発電の三枚羽根が、月明かりを受けて回っている。夜景の中を、彼女はただただ走る。

 右手がすれ違っていく。絶対に止まれない。絶対に――!

 

 やがて、不良たちの気配は遠のいた。都市部を離れ、大きな川沿いへと出る。そこには全長約150メートルの鉄橋。

 少女はその橋を駆け抜けながら、後ろを振り返る。……もう、誰もいない。

 

「……こ、これなら……だ、大丈夫……」

 

 ぺたんとその場に座り込み、少女は肩で息をした。心臓がうるさいほど鳴っている。右太ももに手を伸ばすと、そこには特注のホルスター。中には小さな食用ナイフ。

 握る手が、震えていた。使わなかった。誰も傷つけなかった――その事実に、ようやく心が少しだけ安堵する。

 

 だが。

 

「ったく、何やってんのよアンタ。いつもなら、人が変わったみたいにボコボコにするくせに」

 

 声に、少女の体がビクリと跳ねた。

 振り返ると、そこには見覚えのある少女。灰色のプリーツスカートに、半袖のブラウス、そして肩までの茶髪を揺らす彼女。

 ――ファミレスで絡まれていた、あの子だ。

 

「美琴ちゃん……まさかとは思うけど」

「うん。めんどかったから、やっておいたわ」

 

 バチン、と。青白い火花が弾けた。肩先から漏れる火花は、彼女の能力の証。

 御坂美琴。学園都市に七人しかいない超能力者(レベル5)の一人。そして、少女の――数少ない友人。

 

「美琴ちゃん、それは余計だったよ……」

「何よ。アンタの方が余計なことばっかするでしょうが」

 

 一ヶ月近く顔を合わせるうちに、互いに軽口を叩き合えるようになっていた。美琴はハンカチを取り出し、差し出してくれる。少女は「ありがとう」と小さく呟き、それで顔を拭く。

 

「とりあえず、無能力者(レベル0)のアンタは、夜に出歩かない方がいいわよ」

「わかってる……。もう帰る」

「あ、それと。あの食い逃げ、私が払っといたから。貸しね」

「うぐっ……」

 

 美琴に貸しを作る。良かった試しは一度もない。だから――

 

「私、自分より強い“人間”がいるの、許せないのよね。だから……勝負よ!」

 

 宣言とともに、再び雷鳴が街に轟く。

 少女の逃走劇は終わったが、嵐は、別の形で始まろうとしていた。


 
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