No.1194339

とある少女のフコウ説。三話

とある魔術の禁書目録の二次創作です。
上条当麻女成り代わり主の体に空の境界の両儀織が同居してます。危険があると入れ替わります。

2026-10-09 14:53:37 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:33   閲覧ユーザー数:33

三、「一方通行(アクセラレータ)」

 

 補習に出た。

 小萌先生の声を聞きながら、ふと脳裏に浮かんだのは——

 

『私と一緒に、…地獄の底までついて来てくれる?』

 

 頼っていいよ、そう言った私に、彼女は笑って、そう返してきた。

 その言葉に、すぐに頷けなかったのは、きっと私が「消えたくない」と思ってしまったからだ。

 

 インデックスを助けなければ、彼女はずっと記憶を一年周期で失い続ける。

 彼女自身も、彼女を守ろうとしてきた魔術師たちも、報われない未来しか待っていない。

 頭のでは分かっている。分かっているのに、踏み出せない。

——私一人だけのことなら、きっとこんなに迷わなかった。

 

 問題は、私の中にもう一人いる「彼」の存在だ。

 

 十六年間も一緒にいるけれど、昼間の彼は大抵眠っていて、まともに話せることは滅多にない。

 たまに、私が眠っている間に起き出しては、どこかへ散歩に出るらしい。

 不良に絡まれたときなど、ピンチになると彼が表に出てきて助けてくれる。

 ……助けてくれてるのだから、悪い人じゃない。でも、もし私が記憶を失えば、この奇妙な同居関係も壊れてしまう。

 

 彼を理解できるのは、今や私だけだ。家族も友達も、先生もクラスメイトも、誰一人知らない。

 唯一事情を知っているのは、学園都市に来てからずっとお世話になっている病院の医者くらい。

 

 だから——私は彼をひとりにしたくない。

 物心ついたころ、彼が「寂しい」と呟いたのを覚えている。そのとき、私は三歳くらいだったと思う。

 あのとき私は、絶対に彼を独りにしないと、そう決めた。

 

 ……でも、それでも。

 インデックスを助けないなんて、そんな選択は違うとも思ってる。

 

「上条ちゃーん! 先生の話をちゃんと聞かないと、すけすけ見る見るですよ〜?」

 

 小萌先生の声に、思考が途切れた。

 いや、私、透視(クレアボイアンス)専攻じゃないから! と心の中で突っ込む。

 慌てて真剣なふりをして、講義に集中するのだった。

 

※

 

 補習とは名ばかりで、完全下校時刻まできっちり拘束された。

 

「……不幸だよ」

 

 オレンジ色の夕焼けに染まる風力発電のプロペラを見上げて、私はため息を吐いた。

 学園都市では夜遊び厳禁のため、交通機関の終バスは下校時刻に合わせてある。

 それを逃した私は、灼熱の商店街をとぼとぼと歩いていた。

 

 そんなときだった。

 

「あっ、いたいた! ちょっと待ちなさ……ちょっと! アンタ、止まりなさいってば!!」

 

 声の主は、御坂美琴だった。

 息を切らしながらこちらに駆けてくる。

 

「……何か用?」

「大ありよ! アンタに勝つまで付きまとうって決めたんだから!」

「いい加減あきらめたら? あ、昨日のハンカチまだだから、また今度ね」

「別にいいけど……アンタ、律儀ね」

「普通じゃない?」

「それより、勝負よ勝負!」

 

 肩にビリビリと電気が走ったかと思うと、美琴の機嫌が急降下。

 その怒りに連動して、周囲のスマホが一斉にバギンと音を立て、有線放送がプツリと切れた。

 警備ロボットがギギ、と不穏な音を立てて動作を停止する。

 

 ヤバい!

 

 私は美琴の手を強引に掴み、その場から走り出した。

 背後から、警備ロボットの警報音が鳴り響く中で。

 

 ※

 

 なんとか学生寮へと逃げ帰り、美琴にも勝負はしないと伝えて別れた。

 人影のない寮のオートロックを抜け、エレベーターで七階へ。

 扉が静かに開く。

 

——異変に気づいたのは、その瞬間だった。

 

 部屋の前に、誰もいない。

 けれど、胸がざわついた。

 今朝、インデックスの服に触れたとき、確かに結界が壊れる音がした。

 もし彼女の結界が完全に解けていたなら、神裂火織に斬られていた可能性もある。

 

 私は慌てて階を駆け下り、敷地内を走り回る。

 でも、いない。

 焦りばかりが募る。

 

 そのとき、着信音が鳴った。

 こんなタイミングで……と苛立ちつつ画面を見れば、

 

『当麻。今どこにいる?』

「一方通行(アクセラレータ)? どうしたの、こんな時間に珍しいね」

『帰り道で、背中を斬られたみたいな奴が倒れててな。そいつが、とーま、とーまって言ってやがる。オマエの知り合いかと思ってな』

「インデックス!? もしかして保護してくれたの?!」

『ああ。今、位置情報を送る。すぐ来い』

 

 その言葉に、胸の奥で何かが弾けた。

 まだ間に合う。私はすぐに走り出す。

 

 この先に待つ戦いがどうであれ、彼女を助けに行く。それだけは、決めていたから——。


 
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